スポーツに関わるトレーナーであれば何度も耳にするであろう、
ボルタレンとロキソニン。
両方とも鎮痛剤/痛み止め薬として有名ですが、その違いは何なのでしょうか?
純粋に作用が強い、弱いという違いだけなのか、それ以外にも何か違いがあるのか。。
この2つの痛み止め以外にも、どのような種類があるのか解説していきます!
・ボルタレンとロキソニンの違いについて知りたい
・痛み止めの作用機序を知りたい
ボルタレンとロキソニンの違いとは?
まずは細かな説明は省いて結論から、
ロキソニンは平均的な鎮痛効果だが速く作用する
といった感じです。
それぞれの特徴を以下にまとめてみました。
・効果が強い反面、作用時間が短い。
・副作用も出やすい(特に胃腸障害)
・消炎/鎮痛/解熱作用を平均して持つ。
・ボルタレンよりは効果が弱い反面、作用の発現が速い。
・副作用も比較的でにくい
より強い鎮痛作用を求める場合は”ボルタレン”ということになります。
ロキソニンは市販薬としてもよく見かけるかと思いますが、ボルタレンは医師の処方が必要になります。
ただこの「ロキソニン」や「ボルタレン」は製品名であって、成分の名前ではありません。
ボルタレンは、ジクロフェナク。
という成分名です。
実は痛み止めと一言でいっても、その種類は数多く存在します。
今回は一歩踏み込んで、痛み止めの種類についても少し解説していこうと思います。
ボルタレン・ロキソニンの違いだけでなく、より理解を深めたい方はぜひチェックしてください!
痛み止めの種類について
鎮痛剤、いわゆる痛み止めは、大きく
- NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)
- アセトアミノフェン
- オピオイド系
- α2δリガンド
の4つに分類できます。
それぞれの特徴について軽く説明していきます!
痛み止め①:NSAIDs
NSAIDsは日本語で非ステロイド性消炎鎮痛薬と呼ばれています。
NSAIDsは
することで、様々な作用をもたらします。
その作用は大きく4つあり、
- 抗炎症作用
- 鎮痛作用
- 解熱作用
- 抗血小板凝集作用
があります。
ボルタレンもロキソニンもこのNSAIDsに分類されます!
詳細は後ほど!
痛み止め②:アセトアミノフェン
非ピリン系の解熱鎮痛薬です。
アセトアミノフェンが症する場所は主に「脳」とされています。
血管を拡張させ解熱したり、痛みの感受性を低下させたりはしますが、
末梢での炎症を抑える作用は少ない
とされています。
NSAIDsと比べても副作用が少なく、小児にも安全に用いることができる薬となっています。
痛み止め③:オピオイド系
脳神経系の様々な部位にあるオピオイド受容体に作用する薬です。
モルヒネなどがこれにあたりますね。
NSAIDsやアセトアミノフェンよりも強い鎮痛作用をもつため、癌の痛みを抑制する薬としても利用されています。
痛み止め④:α2δリガンド
神経障害性疼痛に用いられる薬で、商品名では”リリカ”として広く認知されています。
神経細胞内へのカルシウム流入を抑制し、興奮性神経伝達物質の過剰な放出を防ぎます。
日本ペインクリニック学会の神経障害性疼痛ガイドラインでは、第一選択薬となっています。
NSAIDsの作用
NSAIDsには、
- 抗炎症作用
- 鎮痛作用
- 解熱作用
- 抗血小板凝集作用
があると言いましたが、それぞれもう少しだけ深掘りしていきますね!
ちょっとややこしいですが、知っておくことでより理解が深まります。
ちなみにどの作用にもNSAIDsの一番の役割である
「プロスタグランジン産生の抑制」
が関わってきます。
もう少し踏み込んで説明すると、NSAIDsには
があり、それが抑制されることで、プロスタグランジンの産生も抑制されるということになります。
NSAIDsの作用①:抗炎症作用
1つ目が炎症を抑える作用です。
プロスタグランジンは、
・血管透過性の亢進
・白血球の浸潤増加
など、炎症を増強させる作用があるため、このプロスタグランジンが抑制されることで、炎症を抑えることができます。
NSAIDsの作用②:鎮痛作用
2つ目が痛みを抑制する作用です。
プロスタグランジンの産生が抑制されることで、
し、痛みを和らげます。
麻酔とは違い、
炎症部位での疼痛を選択的に抑制できる
ことが大きな特徴です。
NSAIDsの作用③:解熱作用
3つ目が熱を下げる作用です。
怪我や感染症によって発熱が起きると、最終的にプロスタグランジンが関与し、
セットポイント(基準値)を高く変更
させます。
NSAIDsはこれを抑制するので、セットポイントが37°に戻り熱が下がる。というメカニズムです。
平熱以下には下がりません!
NSAIDsの作用④:抗血小板凝集作用
4つ目が血小板を固まりにくくさせる作用です。
私たちは出血をすると血小板が凝集し、血栓を作ることで出血を止めます。
プロスタグランジンは血小板を組織に粘着させる作用があるため、
これが抑制され、血液が固まりにくくなります!
NSAIDsの分類
ここまで痛み止めの種類について説明してきました。
その中でもNSAIDsはより細かく分類することができます。
・アリール酢酸系:作用が強い反面、持続時間が短い
・プロピオン酸系:平均的な作用をもち、副作用が少ない
・フェノム系:解熱作用が特に強力
アリール酢酸系にはボルタレンが、プロピオン酸系にはロキソニンが含まれます。
このように同じNSAIDsでも若干特徴が違います。
痛み止めの注意点
アセトアミノフェンのように副作用のリスクが少ない薬もありますが、痛み止めはどれも
ということをしっかりと理解しましょう。
私達がよく使用することの多いロキソニンなどのNSAIDsは、
胃腸障害
が起こりやすいと言われています。
胃の粘膜を保護する作用があるプロスタグランジンを抑制してしまうため、胃が荒れやすいということです。
最悪胃潰瘍になる場合もあります。
比較的副作用が少ないといったアセトアミノフェンは胃腸系の障害はほぼ起きません。
その代わり、肝臓には負担がかかるので、毎日のようにお酒を飲んでいる方は注意が必要です。
脳震盪後の飲んでいけない痛み止め
コンタクトスポーツで稀に発生する「脳震盪」ですが、脳震盪の中でも最も起こりやすい症状が
です。
受傷日に関しては、強い頭痛を訴える選手が多いので、選手は頭痛薬を飲みたいと言ってくることが多いです。
その時に、飲ませてもいい痛み止めと飲ませてはいけない痛み止めというもの存在します。
その飲ませてはいけない痛み止めとは、
です。
要はボルタレンやロキソニンは飲ませてはいけません。
NSAIDsには血小板凝集を阻害する作用があるため、万が一頭蓋内出血を起きていた場合、
症状を隠しながら状態を悪化させてしまう
リスクがあります。
その為、脳震盪の選手には、血小板凝集阻害作用のない
を飲ませるようにしましょう!
結論:副作用をしっかりと理解して服用しましょう!
もう一度おさらいすると、ボルタレンとロキソニンの違いは、
・ロキソニンは平均的な鎮痛効果だが速く作用する
になります。
また、これらの薬は脳震盪後に服用させてはいけません。
必ず血小板凝集阻害作用のない、アセトアミノフェン(カロナール)を服用させるようにしましょう!
これらの知識を知っているからどうなる。ってことはありませんが、知っておいても損はない内容だと思います。
また、アスレティックトレーナーの方は必ず知っておいた方がいいと思います!
ぜひこれを機に「痛み止め薬」にも注意してみてください。
