過去数回にわたり、「熱中症」をテーマに記事を執筆してきました。
ぜひまだ過去の投稿を読まれていない方は、ご覧ください!
≫≫熱中症の予防・対策を徹底解説!現役スポーツトレーナーが実践している方法を紹介します
≫≫熱中症対策としての水分補給の目安は?何をどのくらい飲めばいいのかを徹底解説!
今回は熱中症の予防としても、処置としてもとても重要になる「深部体温を下げる」という行為を深堀していきたいと思います。
運動前や運動の間に深部体温を一度下げてあげることで、熱中症のリスクは軽減します。
熱中症になってしまった場合にも、速やかに深部体温を下げてあげることがとても重要で、どうすれば深部体温を下げられるのか。はよく議論になります。
今回どのように深部体温を下げればいいのか?また効率の良い方法としては何があるのか?をご紹介します!
・運動をよくする方
・熱中症に一度なったことがある方
熱中症と深部体温の関係性
熱中症は症状や病態によって、4つに分類されます。
- 熱痙攣
- 熱失神
- 熱疲労
- 熱射病
この中で最も重症度が高いのが熱射病です。
最悪死に至る場合もあります。
この熱射病とは、体温調節が破綻して起こり、高体温と種々の程度の意識障害が特徴の疾患になります。
要は、
と言い換えられます。
もちろん、水分補給も同様に大事ではあるのですが、この熱射病では深部体温をいかに低下させるかが一番大事になってくるのです。
熱中症の重症度については、過去の記事でまとめているので気になる方はご覧ください。
≫≫熱中症のレベル(重症度)を徹底解説!子供・高齢者はよりリスクが高いため注意が必要
では実際にどのような方法で深部体温を下げればいいのか。解説していきます!
熱中症予防の深部体温戦略
今回は労作性熱中症の予防としてお話します。
要は運動中に起きる熱中症を予防するために、どうやって深部体温を下げるかというお話です。
非労作性熱中症のように、高齢者が室内で熱中症になってしまうケースに関しては、
・室内温度の管理
が一番大事になってくるので、今回ご紹介する方法とは少し違ってきます。
では、さっそく深部体温を下げる方法をいくつかご紹介いたします。
- アイススラリー
- アイスバス
- 手部冷却
では1つ1つ解説していきます!
深部体温下げる方法①:アイススラリー
まず1つ目がアイススラリーです。
これは過去の記事や私のInstagramでも何度か取り上げています。
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ぜひ気になる方はそちらもチェックしてみてください!
アイススラリーとは、
を指します。
溶けかけのかき氷をイメージしてもらうと理解しやすいかなと。笑
要は食道や胃など、体の内部から体温を効率的に下げようよ。というのがアイススラリーの目的なんですね。
実際に研究でも効果的に深部体温を下げることができると分かっています。
運動パフォーマンスも向上する
実は、深部体温を下げることでパフォーマンスが向上することも分かっています。
もちろん、暑熱環境下という気温が高い日が条件にはなってきますが。。
実際に、
2.冷水(4°)
を体重あたり7.5g摂取した際に、アイススラリーの方が有意に深部体温が低下したという研究結果があります。
さらに、その後の持久性パフォーマンスが向上したとも報告されています。
熱中症予防の観点からも、パフォーマンス向上の観点からも過度な深部体温上昇を防ぐことがいかに重要かお分かりいただけるかと思います。
アイススラリーの注意点
ただ、こんな優秀なアイススラリーにも注意点が存在します。
それは、
- 胃腸が弱い人は下しやすい
- お腹が満たされ、水分補給が疎かになる
- ミキサーが必要
- パフォーマンス向上の観点からすると、体重 1kgあたり7.5gも必要
ということ。
まず胃腸が弱い人はお腹を下しやすいということです。
このような人はまずは少量から始めてみてください!
さらに、アイススラリーはシャーベット状なのでお腹が満たされやすく、肝心な水分補給が疎かになりやすいという点も要注意です。
熱中症予防の観点からすると、深部体温を下げることと同じくらい水分補給が重要になってきます。
アイススラリーを導入する際は、水分補給もしっかりと心がけるようにしましょう!
≫≫熱中症対策としての水分補給の目安は?何をどのくらい飲めばいいのかを徹底解説!
あとは、シャーベット状にするためのミキサーが必要だったり、
パフォーマンス向上の観点だと、体重1kgあたり7.5gのアイススラリーが必要だったり、用意するのが大変というデメリットもあります。
深部体温下げる方法②:アイスバス
2つ目がアイスバスですね。
聞きなれない方もいるかもしれませんが、冷水浴と同じです!
よく深部体温を効率的に下げるためには大きい血管を冷やした方がいい!と聞いたことがあるかと思います。
しかし、これは既に非効率な冷やし方であるということが証明されています。
現在では、効率的に深部体温を冷やすには”冷水に全身を浸かること”が常識になりつつあります。
この図は、ある研究論文の結果を私が図にまとめたものです。
上に行けばいくほど、効率的に深部体温を下げることができるということになります。
一番右に書かれている太い血管を冷やすという行為はそこまで深部体温を下げないことが分かります。
逆に一番左に書かれている「氷水に全身浸かる」方法が一番効率的に深部体温を下げることできます。
熱中症になってしまった場合はもちろんのこと、予防としてもアイスバスに入ることは多々あります。
試合のハーフタイム、午前練習と午後練習の合間、練習後のリカバリーとして。
アイスバスの用途は多岐にわたります。
深部体温下げる方法③:手部冷却
3つ目が手部冷却です。
こちらもあまり聞きなれないかもしれません。
しかし、首や腋窩などの太い血管を冷やすよりも、手を冷やした方が体温が下がるということが分かっています。
太い血管を冷やすとなると、首・腋窩・鼠径部など、少なくとも左右合わせて5か所は冷やさなくてはいけません。
しかし、手部であればバケツ1つ用意すればそれでOKです。
または袋に氷を入れてそれを両手で持つ方法でもいいかもしれません。
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/selfcare/heatstroke-02/ より抜粋
なぜ手を冷やすといいのか?
ではなぜ手を冷やすと、効率的に深部体温を下げることができるのでしょうか?
それは手に
と呼ばれる血管があるからです。
一般社団法人長崎県サッカー協会医学委員会facebook より引用
私たちは体温が高くなると、このAVAの血流量が増加し熱を体外に放出します。
そして冷えた血液が深部に帰ってくることで、体温が上がりすぎないようにコントロールしています。
それをアシストしてくれるのが手部の冷却ということですね。
しかし、氷水が冷たすぎるとかえって効率が低下してしまうという指摘もあるため、15°くらいが1つの目安になるとのこと。
そしてこれは冷えたペットボトルを握るだけでも効果があったというのです。
熱中症予防の観点からも冷えた水分を補給することだけでなく、その冷えたペットボトルを握ることも重要だと言えますね!
熱中症予防の深部体温戦略-おまけ-
他にもスポーツ現場で実際に実践している方法として
があります。
これは専用のベストがあるのですが、それを氷水にて冷却し、選手に着させるというものです。
保冷剤を入れるクーリングベストが主流かもしれませんが。。
少し手間はかかりますが、ハーフタイム中など、限られた時間の中で効率的に深部体温を冷やす方法としてはかなり有効的だと思います。
個人で運動している方は導入しにくいですが、チーム全体として取り入れるのはありだと思います。
深部体温を下げるということは、熱中症予防としてだけでなくパフォーマンス向上効果もあると考えれば、取り入れる価値はかなりありますよね!
結論:深部体温を下げる方法は1つだけじゃない!
今回は熱中症予防の観点から深部体温をどうやって下げるかということで、3つの方法をご紹介しました。
これら3つを単独で実践するのもいいですが、うまく併用していくとさらに効果が上がります。
例えば私が見ているスポーツチームでは、ハーフタイム中に
・手部冷却
・アイスベスト
・アイスパック
・冷風
・アイスタオル
・(アイスバス)
これらの冷却法を同時並行して行っています。
※全ての選手ではありません。
これはチームだからできることではありますが。。
ぜひ個人で運動されている方も、水分補給だけでなく「深部体温を下げる」ことにも注意してみてください!
