こんにちは。
トレーナーのこうた(@trainer_blog)です!
本日はアイスバス/冷水浴/冷水浸漬に関する最新の論文のご紹介です!!(2025/1に掲載)
今回はアスリートを対象にしたものではなく、一般の方を対象にした研究になります。
ただ、アスリートにも応用が利く内容かなと思うので、ぜひチェックしてみてください!!
🧊 はじめに
近年、冷水浸漬(Cold-Water Immersion: CWI)は、単なるスポーツリカバリー手段としてだけでなく、健康促進やウェルビーイング向上のための手法として広く注目を集めています。
例えば、アスリートの間では筋肉痛の軽減や疲労回復のためにCWIが用いられることが一般的ですが、最近ではストレス軽減、免疫向上、睡眠の質向上などの一般的な健康効果も期待されています。
しかし、CWIの効果に関する研究の大半はスポーツパフォーマンスに焦点を当てており、健康な一般成人におけるCWIの影響については十分に検証されていませんでした。
そこで2025年にPLOS ONEに発表された最新の系統的レビューとメタアナリシス(Cain et al., 2025)は、CWIが健康な成人に与える心理的・認知的・生理的影響を包括的に分析し、その時間依存的な効果を明らかにしました!!
本記事では、この最新研究の結果を詳細に解説し、CWIの科学的根拠について掘り下げていこうと思います!
📌 研究の概要:従来の研究と何が違うのか?
CWIに関する研究は数多く存在しますが、今回の研究の新規性は以下の3点にあります。
- スポーツ選手ではなく、健康な成人を対象としたメタアナリシス
- これまでの研究の多くはアスリートのリカバリーに焦点を当てたものであり、一般の健康な成人が日常生活にCWIを取り入れる際の影響を体系的に分析した研究はほとんどありませんでした。
- 幅広い健康指標(心理・認知・生理的側面)を分析
- CWIの影響として、ストレス、炎症、免疫、睡眠の質、気分、生活の質など、多岐にわたる指標を評価した点が特徴的です。
- CWIの時間依存的な影響を明確に示した
- 例えば、炎症は即時的に増加するが、ストレス軽減効果は12時間後に顕著になるなど、CWIの効果が時間とともにどのように変化するのかを分析しました。
このように、本研究は「CWIの一般成人への効果」と「CWIの時間依存的な影響」という2つの視点で新たな知見を提供していると言えます。
📊 研究方法:どのように分析されたのか?
🔬 研究デザイン
- 10の電子データベース(CINAHL, Cochrane, MEDLINE, etc.)から2024年1月17日までの関連研究を検索
- 11件の無作為化比較試験(RCT)が対象(参加者合計 3,177人)
- CWIの介入条件:
- 水温15°C以下
- 30秒以上の冷水シャワー・氷風呂・水風呂
- 対象者:健康な成人(アスリートや疾患のある人は除外)
📌 主要評価項目
CWIが以下の要素に与える影響を評価:
- 生理的影響:炎症、免疫機能、疲労、エネルギー
- 心理的影響:ストレス、うつ、不安、気分、ウェルビーイング
- 認知機能:集中力、注意力
📈 研究結果:CWIの影響は時間とともに変化する
本研究の最大のポイントは、CWIが「時間依存的な影響を持つ」ことを明確に示した点です。
短期的な影響と長期的な影響が異なり、単純に「CWIは良い」と結論づけるのではなく、その効果がどのタイミングで現れるかを考慮する必要があります。
🔥 炎症:即時的に増加するが、長期的影響は不明
- CWI直後(SMD: 1.03, p<0.01)および1時間後(SMD: 1.26, p<0.01)に炎症が有意に増加
- 炎症マーカー(IL-6, TNF-αなど)の急激な上昇が確認された
- 24時間後以降のデータが不足しており、長期的な炎症への影響は不明
💡 考察:
CWIは一部で「抗炎症作用がある」と考えられているが、本研究では短期的にはむしろ炎症を増加させることが示された。
これは、CWIが一時的に免疫系を刺激し、交感神経系の活性化やストレスホルモン(ノルエピネフリン)の分泌を引き起こすためと考えられる。
一方で、長期的な抗炎症効果があるかどうかは今後の研究が必要。
😌 ストレス:即時効果なし、12時間後に低減
- CWI直後(SMD: -0.09, p>0.05)、1時間後(SMD: -0.29, p>0.05)、24時間後(SMD: -0.06, p>0.05)、48時間後(SMD: 0.09, p>0.05)では有意なストレス軽減効果なし
- しかし、12時間後に有意なストレス低減(SMD: -1.00, p<0.01)
💡 考察:
CWIのストレス軽減効果は「即時には現れず、12時間後にピークに達する」ことが明らかになった。
これは、CWIによって交感神経が一時的に活性化されるが、その後副交感神経が優位になり、リラクゼーション効果が発現するためと考えられる。
このメカニズムを考慮すると、「ストレス対策としてCWIを活用する場合、効果を実感するには半日程度の時間が必要」という重要なポイントが見えてくる。
🛡️ 免疫機能:即時効果なし、病欠率が29%減少
- CWI直後および1時間後の免疫機能に有意な変化なし(SMD: -0.16, p>0.05 / SMD: -0.18, p>0.05)
- 1ヶ月間、冷水シャワーを継続したグループでは病欠率が29%低下(p=0.003)
- ただし、実際の病気の日数には差がなかった
💡 考察:
CWIは免疫機能を直接的に高めるわけではないものの、病欠率を低下させる効果があることが示唆された。
この結果は、「CWIが免疫システムを活性化させる」というよりは、「CWIがストレス軽減や代謝機能の向上を促し、結果的に体調不良を防ぐ可能性がある」ことを示唆している。
また、CWIを日常に取り入れることで、自己管理意識の向上が影響している可能性もある。
🌙 睡眠の質:向上が確認される
- CWI群の睡眠の質が有意に向上(p=0.04)
- 女性を対象としたデータが不足しており、性別差の影響は不明
💡 考察:
運動後のCWIは睡眠の質を向上させる可能性が示された。
これは、CWIによって一時的に交感神経が活性化された後、副交感神経が優位になり、リラックス状態へ移行するためと考えられる。
ただし、女性や異なるライフスタイルを持つ人々への影響についてはさらなる研究が必要である。
🔬 まとめ:CWIの時間依存的な影響を理解することが重要!
本研究の結果をまとめると、CWIは時間とともに異なる影響をもたらすことが明らかになった。
✅ 短期的には炎症を増加させるが、長期的な影響は不明
✅ ストレス軽減効果は即時ではなく、12時間後にピークを迎える
✅ 免疫機能への直接的な影響は不明だが、病欠率の低下が観察された
✅ 睡眠の質が向上する可能性がある
💡 今後の課題と応用
- CWIの長期的な影響を検証するための長期的な研究が必要
- 最適なCWIの温度・時間・頻度を確立する研究が求められる
- 女性や高齢者を対象とした研究が不足しているため、さらなる検証が必要
CWIを日常生活に取り入れる際には、その即時的な影響と時間とともに現れる影響を理解し、目的に応じた使い方をすることが重要かなと思います!
というわけで今回のブログは以上となります!
最後までご覧いただき、ありがとうございます!
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