こんにちは。
トレーナーのこうた(@trainer_blog)です!
近年、術後合併症のリスク低減や回復促進を目的とした術前リハビリテーション(プレハビリテーション)が注目を集めています。
まあ近年に限ったことではありませんが…
BMJ誌に掲載された最新のシステマティックレビューおよびネットワークメタアナリシスでは、プレハビリテーションの各構成要素(運動・栄養・認知・心理社会的介入)の有効性が詳細に検討されました。
本記事では、最新のエビデンスを基に、どの介入が最も有効なのかを解説します!
プレハビリテーションとは?
プレハビリテーションは、手術前に患者の身体的、栄養的、認知的、心理的状態を改善することを目的とした介入です。
術前に健康状態を最適化することで、術後合併症の抑制、入院期間の短縮、健康関連QOL(Quality of Life)の向上、身体的回復の促進が期待されています。
しかし、どの要素が最も効果的なのか、また複数の介入を組み合わせることで相乗効果が得られるのかは、これまで明確ではありませんでした。
研究デザインと方法
本研究は、無作為化対照試験(RCT)を対象としたシステマティックレビューおよびネットワークメタアナリシスであり、以下のデータベースから文献を収集しました。
- データベース:Medline、Embase、PsycINFO、CINAHL、Cochrane Library、Web of Science
- 検索期間:2022年3月1日~2023年10月25日
- 対象試験数:186件のRCT(15,684人の参加者)
- 評価項目:術後合併症の発生率、入院期間、健康関連QOL、身体的回復(6分間歩行距離など)
この研究では、従来のメタアナリシスでは難しい「複数の介入を比較する」手法(ネットワークメタアナリシス)を活用し、各介入の相対的な有効性を評価しました。
プレハビリテーションの効果:詳細な結果解析
① 術後合併症のリスク低減
プレハビリテーションの導入によって、術後の合併症発生率が有意に低下しました。
特に、以下の介入が効果的であることが示されました。
- 単独の運動プログラム(OR 0.50, 95% CI 0.39-0.64):合併症リスクを50%低減
- 単独の栄養介入(OR 0.62, 95% CI 0.50-0.77):38%のリスク低減
- 運動+栄養+心理社会的介入の組み合わせ(OR 0.64, 95% CI 0.45-0.92):36%のリスク低減
この結果から、運動および栄養のプレハビリテーションが最も合併症抑制に寄与することが明らかになりました。
② 入院期間の短縮
入院期間の短縮においても、プレハビリテーションの有効性が確認されました。
特に以下の介入が、約1~2.5日の入院期間短縮と関連していました。
- 運動+心理社会的介入(-2.44日, 95% CI -3.85~-1.04):最も効果的
- 運動+栄養(-1.22日, 95% CI -2.54~0.10)
- 単独の運動(-0.93日, 95% CI -1.27~-0.58)
- 単独の栄養(-0.99日, 95% CI -1.49~-0.48)
特に、運動と心理社会的介入を組み合わせたプログラムは、入院期間の大幅な短縮に寄与しました。
③ 健康関連QOLの向上
プレハビリテーションは、患者の健康関連QOL(Quality of Life)を改善する可能性があります。
特に以下の介入が効果的でした。
- 運動+栄養+心理社会的介入(MD 3.48, 95% CI 0.82~6.14):最も大きな改善
- 単独の栄養(MD 3.28, 95% CI -5.03~11.60)
- 単独の運動(MD 2.29, 95% CI 0.96~3.62)
この結果から、特に運動と栄養を組み合わせたプログラムがQOL改善に寄与することが示唆されました。
④ 身体的回復の促進
術後の身体的回復(6分間歩行距離の向上)においても、プレハビリテーションの効果が確認されました。
- 運動+栄養+心理社会的介入(+43.43m, 95% CI 5.96~80.91)
- 運動+栄養(+40.52m, 95% CI -32.33~113.38)
- 単独の運動(+25.73m, 95% CI 6.11~45.35)
術前リハビリによる身体機能向上が、術後の回復速度を高める可能性が示されました。
考察:プレハビリテーションの今後の展望
運動と栄養が最も重要な要素
今回の研究で最も確実性の高いエビデンスを示したのは「運動」と「栄養」でした。
特に運動はすべての主要アウトカムに対して有益であることが確認されています。
臨床導入に向けた課題
- 研究の多くにバイアスのリスクが存在するため、さらなる多施設RCTの実施が求められる。
- プレハビリテーションの標準化が必要(介入期間やプログラムの具体的な内容)。
- 患者の個別ニーズに応じたプログラム設計が必要(高齢者・慢性疾患患者など)。
まとめ
最新のエビデンスによると、運動と栄養を含むプレハビリテーションは、術後合併症のリスクを低減し、入院期間を短縮し、QOLと身体的回復を改善する可能性が高いことが示されました。
ただどんな運動でもいいのか、とりあえず栄養を取ればいいのかといえば、もちろんNoです。
より具体的な事例を知りたい方は、ぜひ原文をチェックしてみてください!!
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ということで今回の記事は以上となります!
最後までご覧いただき、ありがとうございます!
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