梅雨明けなど急激に気温が高くなったときに発生しやすい熱中症。
熱中症は年々増加傾向にあり、その予防・対策が求められています。
特に近年では新型コロナウイルスの影響で、マスクをしながら運動している方もいたり、ステイホームで運動不足が加速していたりもします。
そのような影響のせいか、2020年は2019年と比べても約1.5倍も熱中症による搬送者数が多かったそうです。
では熱中症を対策・予防するためにはどのようなことに気を付ければいいのか。
実際にスポーツ現場で行っている対策・予防策と併せて解説していきます!
・運動をよくする方
・熱中症に一度なったことがある方
熱中症とは?
熱中症とは、
のことを言います。
熱中症は甘く見られることもありますが、死に至る場合もあるため、予防/対策とともに適切な対応も求められます。
熱中症は主に4つの重症度分けがされており、
- 熱けいれん
- 熱失神
- 熱疲労
- 熱射病
の順番で重症度が高くなります。
それぞれどのような状態かによって、若干その後の対応が変わってくるため、それぞれどのような状態・症状なのかを知っておくことはとても重要です。
熱中症については、こちらの記事で詳しく取り上げているので、よろしければご覧ください。
≫≫熱中症のレベル(重症度)を徹底解説!子供・高齢者はよりリスクが高いため注意が必要
また熱中症には、非労作性熱中症と労作性熱中症がありますが、今回は主に労作性熱中症に対する予防・対策のお話になります。
熱中症の予防・対策
では、具体的に熱中症の予防・対策でどのようなことを行えばいいのでしょうか。
私がラグビー現場で実際に行っている方法や、研究での報告も交え解説していきます!
まず初めに今回ご紹介する予防・対策が全てはありませんので悪しからず。
他にも予防・対策はありますが、今回はいくつかに絞ってご紹介します。
- 暑熱順化させる
- WBGTを測る
- 尿の色をチェックする
- クーリングを設ける
- 適切な水分補給
- 前日の睡眠時間の確保
熱中症の予防・対策①:暑熱順化
熱中症のハイリスクの1つに、
”急激な気温の上昇”
が挙げられます。
私達の体がまだ暑さに慣れていないタイミングで、急激に気温が上がってしまうと熱中症になりやすくなってしまいます。
そのため、徐々に体を熱に慣らしていくことが必要になります。
そこで有効になってくるのが
方法です。
・約10~14日間で夏の暑さに身体が適応して起こる変化のこと。
・この期間内は特に熱中症になりやすいため、注意が必要。
湯舟に浸かって暑熱順化
練習直後に40°のお湯に40分間入ることで、涼しい環境下での練習でも暑熱順化できると報告されています。
6日間行うことで効果が見られたと言われているので、梅雨明けの気温が高くなる1週間程前から実施するのがよさそうです。
またほかの研究では、40°のお湯に15分浸かる。
これを2週間行っても効果がみられたと報告されています。
湯舟に浸かって暑さに慣れる。これは効果が証明されていますのでぜひ実践してみてください!
熱中症の予防・対策②:WBGTを測る
2つ目がWBGTを測るということです。
WBGTは湿球黒球温度とも言い、
- 湿度
- 日射・輻射など周辺の熱環境
- 気温
の3つを取り入れた指標のことをいいます。
熱中症は気温が高いだけでなく、湿度が高い日や地面からの照り返しなども大きく関係してきます。
基本的にWBGTが31°以上の日は、原則運動禁止と言われています。
しかし実際は31°以上あっても、大会などを急遽中止にできないのが現状です。
そのため、WBGTって測る意味ある?と疑問に思う方もいるでしょう。。
トレーナー・スタッフ間で”今日は熱中症のリスクが高い日”だという共通認識を持つことが実はとても重要です。
もちろん、個人でランニングなどされる方も、今日はリスクが高い日だという認識を持つことでいつも以上に休憩を長くとったり、水分補給をこまめにとったりといつもより意識が変わります。
熱中症の予防・対策③:尿の色をチェック
3つ目が尿の色をチェックするということです。
尿の色で自分の現在の脱水状況を把握することができます。
濃くなればなるほど水分が足りていないという証拠になり、上図でいうところの4以上の濃さだと脱水と判断した方がいいです。
運動前に尿の色をチェックすることで、もっと水分を摂取した方がいいかの1つの目安になります。
ただ注意点が1つあり、脱水以外にも尿の色が濃くなるときがあるということ。
主に、
・運動性血色色素尿
・なにかしらの病気
で色が濃くなります。
水分補給しているにも関わらず、色が濃い場合は上記を疑ってもいいかと思います。
熱中症の予防・対策④:クーリングを設ける
4つ目がクーリング(冷却)を設けるということです。
これはどういうことかと言うと、深部体温を下げるような取り組みをするということ。
タイミングとしては、
運動前の冷却(プレクーリング)
と
運動中の冷却(パークーリング)
で深部体温を下げましょう。
何で深部体温を冷やせばいいのか?というと、
・アイスバス
・アイスベスト
・アイスパック
・冷風
・手部の冷却
などがあります。
道具が必要になってくるものもあるため、各チーム・個人で準備できるものを取り入れてみてください!
具体的な方法についてはこちらの記事で説明しております!
熱中症の予防・対策⑤:適切な水分補給
5つ目が適切な水分補給です。
これも当たり前と言えば当たり前ですね。
ただ、何をどのくらい飲めばいいのか。がハッキリ分からない方が多いように感じます。
まず何を?ですが、基本的には水よりもいわゆるスポーツドリンクの方が水分補給には適しています。
さらにスポーツドリンクの中でも
・ハイポトニック飲料(低張液)
があり、
アイソトニック飲料は運動前。ハイポトニック飲料は運動中
に飲んだ方が吸収速度が速いため、おススメです。
次にどのくらい?についてですが、まずは基本的に
のが大事になってきます。
喉の渇きを感じた時点で、体の中は脱水状態になっています。
喉が渇いていなくても、水分補給をするようにしましょう。
だいたい1時間に400~800ml程度の水分を補給した方がいいと言われています。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください!
熱中症は年々増加傾向にあり、その早急な対策が求められています。 熱中症には労作性と非労作性があり、体を動かしていない…
熱中症の予防・対策⑥:前日の睡眠時間の確保
最後に睡眠時間の確保です。
運動前日の睡眠時間と体温調節に関する研究があります。
通常の睡眠群と90分睡眠時間を削った群では、睡眠時間を削った群は体温調節がうまくいかず、同じ運動をしていても
と報告されています。
このように熱中症の予防・対策は前日の睡眠から既に始まっています!
気温が高いとわかっている日の前日は、しっかりと睡眠時間を確保するようにしましょう。
睡眠については過去に数記事書いているので、睡眠の質を高めたい方はぜひご覧ください!
≫≫睡眠の質を上げるポイント及び栄養素を徹底解説!簡単な方法から応用編まで詳しく説明します
≫≫睡眠障害のリスク要因5選!睡眠不足は肥満率も死亡率も高いから要注意!
≫≫睡眠に深く関わるメラトニンの作用とは?認知症や骨粗鬆症とも関係があった?
≫≫最高の睡眠が最高の覚醒をもたらす!睡眠不足は太るし不健康になるから今すぐやめるべき
熱中症の予防・対策-チームでの取り組み-
では、実際にスポーツ現場ではどのような予防・対策をしているのでしょうか。
私が実際に見てきたスポーツ現場で、どのような取り組みをしていたかをご紹介します!
練習/試合前の取り組み
まず練習前の対策としては、
・尿の色をチェック
・尿比重計で脱水状態をチェック
・WBGTを測る
・試合前はアイススラリーで深部体温を下げる
このあたりが主な予防・対策になってきます。
スポーツチームだと毎朝コンディションチェックを入力させているチームも多く、そこで睡眠時間や睡眠の質、体調などを聞き取りしています。
尿比重計は、尿中に含まれる溶質成分の量を測ってくれる機械で、脱水状態をより正確に把握することができます。
これは多少労力がかかるので必ずしも必要だとは思いません。
より正確に脱水状態を知りたいのであればおススメです!
練習/試合中の取り組み
練習中に関しては、5~10分程度の少し長めの休息時間を設け、そこで
・アイスタオルで体を濡らす
などの対策をしています。
ただ練習のリズムもあるので、なかなか練習中に何か対策を!というのは難しいのが現状ですね。。
試合中だとハーフタイムでしっかりと時間が設けられているので、
・アイスバス
・アイスベスト
・アイスキャップ
・アイスパック
・アイスタオル
・アイススラリー
・冷風
などを行っています。
これら全部を全ての選手に行っているわけではありません。
熱中症の既往がある選手だったり、体重が重い選手に対してはこれら全てを行う時もあります。
熱中症対策として、スポーツ現場にこのグッズがあれば便利だよね!
というものを過去の記事にまとめているので、もし気になる方はそちらもご覧ください。
結論:熱中症予防・対策は前日から!
熱中症予防・対策は前日の睡眠から既に始まっています!
今回ご紹介したのは、当たり前のことが多いですが、当たり前のことを当たり前に行うことがとても重要になります。
個人でランニングなどを趣味でやられている方も、今回ご紹介した予防・対策をぜひ取り入れてみてください。
もっとテクニカルな方法はないの?もっと具体的に知りたい!
という方は少々お待ちを。。
これから少しマニアックな方法について記事にしていく予定です!
トレーナーさんも個人で運動されている方も、今年は予防・対策を行い、熱中症を0にしましょう!