こんにちは。
トレーナーのこうた(@trainer_blog)です!
最近、「ICEMAN 病気にならない体のつくりかた」という本を読みました。
簡単にまとめると、冷水と呼吸法の組み合わせが最強!みんなやろうぜ!という内容なのですが。。笑
そんなにエビデンスあったっけな?と率直に感じました…
確かに調べてみると、エビデンスレベルがそこまで高くないものであれば、良い報告はたくさんあったのですが、もう少しシステマティックレビューのような論文はないかと探してみました。
今回はこちらの論文のご紹介です!!
≫≫https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/apha.14056
はじめに
冷水曝露(Cold Water Exposure: CWE)は、近年、健康維持やストレス軽減、運動後の回復手段として注目されています。
その歴史は古く、伝統的な健康法の一環として長年利用されてきましたが、科学的なエビデンスの裏付けは限られていました。
本記事では、2023年に発表された最新のレビュー論文「Effects of cold water exposure on stress, cardiovascular, and psychological variables」(Acta Physiologica誌掲載)をもとに、冷水曝露がもたらす多様な効果を解説します。
冷水曝露とは?
冷水曝露は、水温10~20℃程度の冷水に一定時間浸かる、もしくはシャワーを浴びる健康法を指します。
主に以下の効果が期待されています。
- ストレス軽減
- 心血管機能の改善
- 筋肉の回復促進
- 免疫機能の向上
これらの効果を検証する研究が増加しており、本レビュー論文は特に非運動選手を対象に、冷水曝露の影響を系統的にまとめています。
研究手法とレビューの概要
本レビューは、PRISMAアプローチを採用しており、2023年7月までに発表された931件の研究を精査しました。
そのうち、重複や基準を満たさないものを除外し、最終的に24件の研究がデータ解析に含まれました。
研究の対象者は合計445名(男性357名、女性88名)で、研究の質はCochraneリスク評価ツールで評価されています。
冷水曝露の具体的な研究結果の詳細
心理的および認知機能への影響
冷水曝露が心理や認知機能に及ぼす影響については、以下のような結果が得られています。
Seoらの研究では、冷水曝露が被験者の気分に対して有意な変化を引き起こさなかったと報告されています。この研究では、Profile of Mood States(POMS)ツールを使用して評価されました。
CheungらとSeoらは、それぞれの研究で冷水曝露後の集中力や注意力に対する影響を評価しましたが、どちらの研究でも統計的に有意な違いは認められませんでした。
一方、Dunckoらは、1℃の冷水に1分間曝露することで、仮想ナビゲーション課題(Morris Water Task)の成績が有意に向上したことを報告しました(t26=2.3, P<0.05)。
筋温および疲労感に対する影響
冷水曝露が筋温や疲労感に与える影響は以下の通りです。
Eimonteらは、冷水曝露後1~2時間にわたって筋温が有意に低下することを複数の研究で示しました。
一方、Beelenらの研究では、この効果を支持する結果は得られませんでした。
3つの研究では、冷水曝露が疲労感に対して有意な変化をもたらさなかったと報告されています。
しかし、他の2つの研究では、冷水曝露を受けた被験者の疲労感が有意に軽減されたとされています。
心血管系への影響
冷水曝露が心拍数や血圧に及ぼす影響は研究によって結果が分かれています。
5つの研究では冷水曝露後に心拍数の変化が見られませんでしたが、2つの研究では有意な変化が報告されています。
Jonesらの研究では、10℃の水に90分間曝露後、運動中の心拍数が低下しました。
一方、Tikuisisらの研究では、運動後の疲労時に心拍数が増加したとされています。
収縮期および拡張期血圧に関しては、長期的な変化は認められておらず、短期的な効果も一定しませんでした。
代謝と脂質プロファイルへの影響
冷水曝露が血中脂質や代謝に及ぼす影響は以下の通りです。
総コレステロールやLDLコレステロール(悪玉コレステロール)には変化が見られませんでしたが、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が7%増加し、中性脂肪が14%増加したとする研究結果があります。
これらの変化は、冷水曝露後6~12時間にわたって持続しました。
10℃の水に90分間、または1週間にわたって短時間曝露すると、乳酸濃度が減少することが確認されました。
しかし、他の研究では変化が見られなかったとされています。
ストレスホルモンへの影響
ストレス関連ホルモン(コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリン)に対する影響も調査されています。
2つの研究では、冷水曝露後にコルチゾール濃度が変化しなかったと報告されています。
一方、Eimonteらの研究では、曝露後1~2時間にわたってコルチゾールの昼間のピークが持続し、12時間後でも高濃度が確認されました。
48時間後にアドレナリンのピークが確認された研究もあれば、即時効果が認められなかった研究もあります。
炎症マーカーへの影響
冷水曝露が炎症マーカー(IL-6、TNF-αなど)に与える影響も一貫していません。
IL-1βに関しては、全ての研究で冷水曝露の影響が確認されていません。
冷水曝露のまとめと将来の展望
冷水曝露は、心理的、心血管的、生化学的に多様な効果をもたらす可能性がある一方で、結果は一貫しておらず、個々の条件や測定方法に依存しています。
・標準化されたプロトコルの確立
・大規模なサンプルサイズの研究
・長期的な追跡調査
冷水曝露は、適切に活用することで健康維持やストレス管理に役立つ可能性がありますが、さらなる研究による科学的根拠の強化が求められています。
まとめ
冷水曝露の効果を総括すると以下のようにまとめられます。
1. 心理的効果は限定的
冷水曝露が気分や認知機能に与える影響は、現時点では限定的で、明確な効果を示す証拠は不足しています。
一部の研究では、認知課題(空間ナビゲーション)の向上が報告されていますが、大半の研究では顕著な効果が確認されていません。
2. 筋温低下による回復促進の可能性
冷水曝露は筋温を低下させ、運動後のリカバリーを助ける可能性があります。
特に運動後1~2時間にわたる筋温の低下が確認されており、疲労回復や筋肉の炎症抑制に寄与する可能性があります。
3. 疲労感の軽減
冷水曝露は一部の研究で疲労感を軽減することが示されています。
特に、短期的な曝露や低温条件(例:10℃)で、疲労感が軽減したと報告されています。
4. 心血管系への影響は条件依存
心拍数や血圧への影響は、曝露条件や個人差に依存します。
心拍数や血圧の長期的な変化は見られないものの、運動中または直後の一時的な変化が報告されています。
運動直後の心拍数が低下したり、増加したりと結果が分かれており、状況に応じた効果があると考えられます。
5. 脂質代謝の改善の可能性
冷水曝露は血中脂質に有益な変化をもたらす可能性があります。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)の増加や中性脂肪の一時的な上昇が確認されており、代謝改善に寄与する可能性があります。
6. ストレスホルモンへの影響
冷水曝露はストレスホルモン(コルチゾール、アドレナリン)に影響を与えますが、結果は一貫していません。
一部の研究では、コルチゾールの昼間のピークが持続し、アドレナリン濃度が増加することが示されています。
これらの結果はストレス耐性の向上や交感神経系の刺激と関連する可能性があります。
7. 炎症マーカーへの影響は不明確
炎症マーカー(IL-6、TNF-αなど)に対する冷水曝露の効果はまだ明確ではありません。
一部では炎症の抑制が示されていますが、別の研究では再現性がありません。
総合評価
冷水曝露は、心理的、心血管的、生理的なさまざまな側面に影響を与える可能性がありますが、効果の程度は曝露条件や個人差によります。
特に疲労感の軽減や筋温低下、血中脂質改善において有望な結果が得られています。
一方で、心理的効果や長期的な影響についてはさらなる研究が必要です。
このため、冷水曝露は適切な条件で実践することで健康促進やリカバリーの手段として活用できる可能性がありますが、科学的根拠をさらに強化する研究が望まれます。
ということで今回のブログは以上となります!
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
効果はありそうだけど、まだ明確なことはよく分かっていないということが多いですね…
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