こんにちは。
トレーナーのこうた(@trainer_blog)です!
今回は傷害予防についての論文のご紹介です。
≫≫https://bjsm.bmj.com/content/bjsports/48/11/871.full.pdf
はじめに
スポーツや身体活動に取り組む人々にとって、傷害予防は避けられない重要なテーマです。
しかし、どの予防策が最も効果的なのか、科学的に明確な答えを持つ人は多くありません。
「ストレッチは傷害予防に効く」といった根拠のない通説がいまだに広く信じられていますが、果たしてその効果はどうなのでしょうか?
British Journal of Sports Medicine で発表された画期的なメタ分析論文(2014年)は、こうした疑問に対して非常に包括的かつエビデンスに基づいた答えを提示しています。
この論文では、ランダム化比較試験(RCT)に基づくデータを用いて、スポーツ傷害を予防するための運動介入法の効果を詳細に評価しています。
その結果、筋力トレーニングが他の介入法に比べて圧倒的に効果的であることが明らかになりました。
この記事では、論文の主要な発見を紐解き、スポーツ現場やトレーニングにどのように活用できるかを検討していきます。
研究の概要:スポーツ傷害予防における科学的アプローチ
この研究は、26,610人の参加者と3,464件の傷害データを対象にした、25件のランダム化比較試験を分析したものです。
注目すべきは、さまざまな運動介入(筋力トレーニング、プロプリオセプション、ストレッチ、複合的プログラム)を比較し、それぞれの効果を定量化した点です。
研究の主要な発見は以下の通りです:
スポーツ傷害のリスクを68.5%削減。
この介入法が最も効果的であることが証明されました。
慢性的な過使用傷害(例:ランナーの膝やハムストリングの損傷)と急性傷害(例:足首の捻挫や転倒による怪我)の両方に高い効果を発揮しました。
急性傷害のリスクを45%削減。
特に足首の安定性を高めることで、捻挫などの急性傷害を予防する効果が確認されました。
筋力トレーニングやプロプリオセプション、ストレッチを組み合わせたプログラムが、34.5%のリスク削減を実現しました。
ただし、効果の分散や実施上の課題も指摘されています。
傷害予防に対する効果は統計的に有意ではないことが確認されました。
これらの結果から、筋力トレーニングが予防において最も重要な役割を果たし、複合的なプログラムも適切な設計によって効果を高められる可能性が示唆されています。
ストレッチ神話の崩壊:なぜ効果がないのか?
「運動前後にはストレッチをすべき」という考えは、長年にわたって広く受け入れられてきました。
しかし、この研究は、その通説を覆す重要な発見を示しています。
このメタ分析では、ストレッチがスポーツ傷害を予防する上で統計的に有意な効果を示さないことが明確に示されました。
3つのRCTが含まれていましたが、どれも傷害リスクを減らす効果が認められませんでした。
ストレッチは筋肉の柔軟性を向上させるものの、筋肉や靭帯を保護する直接的な効果には乏しいと考えられます。
また、一部の研究ではストレッチ後に筋力が一時的に低下することが指摘されており、これが逆に怪我のリスクを高める可能性も示唆されています。
こうした結果から、ストレッチを傷害予防の主たる手段とするのではなく、筋力トレーニングやプロプリオセプショントレーニングに重点を置くべきであることが明確になりました。
とはいうものの…
慢性障害の予防には効果があったとする論文もありますし、ストレッチは自分の身体と向き合う時間として、結構大事かなと感じています。
自分の些細な張り感に気付けるという点では、ストレッチはかなり有益かなと!!
筋力トレーニングが最強の理由
本研究では、筋力トレーニングが 最も効果的な傷害予防手段 であることが示されました。
その理由を詳しく見てみましょう。
筋肉が強化されることで、関節や靭帯への過度な負荷が軽減されます。
また、筋力が十分であると、身体の衝撃吸収能力も向上します。
不均衡な筋の使用を修正し、特定の部位に過剰な負荷がかかるのを防ぎます。
神経筋制御が改善され、不意の動きや転倒を回避する能力が高まります。
この研究では、筋力トレーニングがスポーツ傷害を67%削減する効果があると報告されています。
この結果は、競技スポーツからレクリエーション活動まで、幅広い運動シーンに適用可能です。
複合的介入の可能性と課題
筋力トレーニングやプロプリオセプション、ストレッチなどを組み合わせた「複合的介入プログラム」は、一見すると理想的なアプローチに思えます。
しかし、以下の課題も存在します
複合プログラムに含まれる要素が多すぎると、それぞれの効果が薄まる可能性があります。
たとえば、筋力トレーニングの効果が他の要素によって相殺されるケースも考えられます。
実施する運動が多岐にわたる場合、参加者が継続するモチベーションが低下しやすいです。
これらの課題を克服するには、複合プログラムを構成する際に、すでに効果が証明された要素を中心に据えることが重要です。
研究の限界と今後の方向性
この研究は非常に包括的ですが、いくつかの制限も指摘されています。
2,一部のデータ不足:クラスター調整が不足している試験があり、その影響を完全に排除することはできませんでした。
3.長期的効果の不明確さ:予防効果が長期的に維持されるかどうかについてのデータが不足しています。
結論:科学的根拠に基づいたアプローチが未来を変える
この研究は、スポーツ傷害予防の分野における重要な方向性を示しています。
ストレッチではなく、筋力トレーニングを中心とした介入が傷害予防において最も効果的であることが明らかになりました。
また、プロプリオセプショントレーニングや複合的介入も適切な設計によって高い効果を発揮する可能性があります。
ということで、今回のブログは以上となります!
少し前の研究で、皆さんご存知の方もいらっしゃったかと思いますが、少しでもお役に立てれば幸いです!
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