皆さんは「横隔膜」という筋肉をご存知でしょうか?
名前に膜という文字があるものの立派な筋肉であり、私達が呼吸する上で欠かせない筋肉になります。
ただこの横隔膜は呼吸だけでなく姿勢の安定に関わっていたり、その機能は多岐にわたります。
実は腰痛や肩こりとの関係性も…
今回はそんな横隔膜の機能について深堀していきます!
・肩こりに悩まされている
・横隔膜について知りたい
横隔膜の解剖
横隔膜は肋骨の内側に付着する筋肉で、主に呼吸筋として機能します。
少し専門的な話にはなりますが、どこに付着してどの神経が支配をしているのか。
解説していきます!
▼青色の部分が横隔膜▼
胸骨部:剣状突起
肋骨部:肋骨7~12番の内側面
腰椎部:腰椎1~3番の椎体前面/弓状靭帯
※右脚→L3、左脚→L2
横隔膜中央部の腱膜(腱中心)
横隔神経(C3~C5)
まず起始はやたら付着部が多いですよね。笑
胸にある胸骨にも、肋骨にも、腰骨にも付着しています。
そして停止は骨ではなく”腱膜”というのも大きな特徴になります。
この横隔膜の白い部分が腱膜でその中央の赤丸が腱中心になります。
横隔膜の機能
では本題の横隔膜の機能について解説していきます。
細かいものを挙げるとたくさんあるのですが、今回は大きな役割として3つご紹介します!
その3つの機能とは、
- 呼吸
- 姿勢維持
- 括約
です。
1つずつ詳しく説明していきますね!
ちなみに細かいものには、
・体液の流動性
・内臓機能の安定
・情動の制御
などの機能も報告がされています。
横隔膜の機能①:呼吸
まず1つ目は呼吸です。
これは皆さん一番イメージしやすいかと思います。
呼吸は大きく分類すると吸気と呼気に分けることができますが、横隔膜は吸気、いわゆる息を吸う時に筋肉が収縮します。
正確には収縮するから息が吸えるというのが正しいです。
・横隔膜
・外肋間筋
その為、純粋な呼吸筋というものは存在しません。
しかし私たちは大きく息を吸ったり、吐いたりすることはできます。
その為、そのような努力呼吸時には
という筋肉が呼吸を手助けすることで大きく息を吸ったり、吐いたりすることができます。
呼吸補助筋とは?
息を吐く時、吸う時の呼吸補助には、
・胸鎖乳突筋
・斜角筋
・内肋間筋
・腹斜筋
・腹直筋
・腹横筋
などがあります。
・運動後で呼吸が荒くなる時
にこれらの呼吸補助筋が使われますが、逆に
横隔膜がうまく機能していない
場合も、これらの呼吸補助筋が働きます。
吸気時の呼吸補助筋は首に付着する筋肉の為、肩こりの原因にもなりえます。
ちなみに呼吸をテーマにした記事を少し前にまとめているので、気になる方はぜひご覧ください。
≫≫間違った深呼吸は逆効果?体の中に酸素を行き渡らせる正しい深呼吸とは
横隔膜の機能②:姿勢維持
2つ目に姿勢維持です。
なぜ横隔膜が姿勢維持に関与するのか。
その大きな理由が
からです。
息を吸うと横隔膜が下がり、腹部が上から蓋をされる形になります。
こちらの動画を見ていただくと、横隔膜の動きはイメージしやすいかなと思います!
腹腔内圧が高まるということは腹部の中に風船が入っているような感じで、内側から外側に向かって圧が加わり腹部が安定します。
「体幹を安定させる」と聞くと、腹筋で外側から固めるのをイメージされるかもしれません。
しかし、普段私達が生活している時に腹筋で体幹を安定させるなんてことはほぼなく、この横隔膜の働きによって姿勢を安定させています。
※もちろん、他の要素も多く関わります。
このような意味からもお腹をへこませるドローインって体幹を安定させるって意味では微妙じゃない?って記事をかなり昔に書いています。笑
≫≫ドローインは意味ない?知られていないドローインの弊害とは
付着部の観点から見る姿勢維持
腹腔内圧意外にも横隔膜は姿勢維持に関与していて、その答えは付着部にあります。
横隔膜は腰椎に付着しており、なおかつ弓状靭帯という靭帯にも付着しています。
そもそも腰椎に付着しているので、腰椎の安定性に何かしら関与するのは明白です。
さらに弓状靭帯というのは、姿勢維持に関わる
とも筋膜を通して繋がっているため、お互いに影響を及ぼしあっています。
このような理由からも横隔膜は姿勢維持に関与していると言えます。
横隔膜の機能③:括約
3つ目が括約です。
括約と聞いても具体的にどのような機能なのかイメージできない方がほとんどだと思います。
実は横隔膜には3つの孔が空いています。
・食道裂孔:食道と迷走神経が通る
・大動脈裂孔:下行大動脈、胸管などが通る
・大静脈孔:下大静脈が通る
大動脈裂孔は脊柱前面にあり、横隔膜を貫くわけではないので、横隔膜の収縮等で動脈が圧迫されることはありません。
ここでいう括約とは、食道裂孔に対する括約機能です。
食道には下部食道括約筋(LES)と呼ばれる、食べ物の逆流などを防ぐための括約筋があります。
横隔膜は、そのLESと共に括約機能を担うということです。
逆流性食道炎を予防するには?
食べ物が逆流する逆流性食道炎の予防にはヨガがいいとされています。
なぜヨガがいいかというと、ヨガでの正しい姿勢や呼吸によって横隔膜をしっかりと機能させることで、括約筋としても機能が強化されるからと考えられます。
また横隔膜の弱化などが原因で起こるとされる食道裂孔ヘルニアという病気も、逆流性食道炎の原因になります。
このようなトラブルにも横隔膜が関わっているってすごく面白いですよね。。
呼吸と姿勢維持の関係性
横隔膜の機能である「呼吸」と「姿勢維持」というのはシーソーのような関係性になっています。
状況に応じてどちらかの機能を優先するようにできているんです。
どういうことかというと、私達がマラソンを走った後を想像してください。
その時はやはり酸素が必要になるので横隔膜が呼吸筋として優先的に機能します。
すると逆に姿勢維持筋としての優先度は低くなるため、真っすぐ立っていられない。横たわってしまう。
なんてことが起こるわけです。
またはその逆で、スクワットで重い重量を持ち上げる時は姿勢維持筋として優先的に機能します。
すると呼吸筋としての優先度が低くなるため、息を止めて踏ん張ってしまう。
なんてことが起こるわけですね。
▼左が呼吸機能が優位。右は姿勢維持機能が優位な状態。▼
横隔膜が原因で腰痛に?
今説明したように呼吸と姿勢は状況によって優先度が変わります。
ということは逆に言うと、私たちの横隔膜が常に呼吸筋として気を取られていると姿勢維持筋として機能しないということにもなります。
例えば、
・ストレスにされされ常に交感神経優位で呼吸が荒い。
・運動不足で少し動くだけで息切れする。
このような人たちは常に横隔膜が呼吸筋として機能しています。
すると姿勢維持として機能しない&腹腔内圧が高まらないので、腰痛になりやすいなんてことも考えられます。
もちろん腰痛には様々な要因が考えられるので、一概に横隔膜だけが悪いなんてことはありませんが。。
結論:横隔膜の機能は優秀でした!
解剖が好きな方からすると横隔膜ってかなり魅力的な筋肉ではないでしょうか。笑
これが大事になってくるのですが、横隔膜を意識的に収縮させることができない。
じゃあどうすればいいのか。
それは
横隔膜が正しく機能する環境を整えてあげる
ことが大事になります。
その姿勢で呼吸したら、そりゃあ横隔膜は正しく機能するよね!
という環境を作ってあげること。
その姿勢の作り方?についてはまた次回の投稿でまとめていきます!
図解で分かりやすく理解したいのであればこちらの本がおススメです。