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アムステルダム会議から見るスポーツ関連脳振盪(SRC)の予防・診断・治療の全貌

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こんにちは。

トレーナーのこうた(@trainer_blog)です!

 

スポーツに関わっているトレーナーさんであれば、既にご存知だと思いますが、2022年に脳振盪に纏わることで大きな出来事がありましたよね。。

 

そうです!!

第6回国際スポーツ脳震盪会議(アムステルダム会議)が開催され、新たなガイドラインが提示されたのです!!!(ドヤッ

 

まだ詳細を知らないという方もいるかもしれませんので、今回はその会議の内容を端的にまとめたいと思います。

ぜひ原文が気になる方は原文を読んでみてくださいね。

≫≫https://journals.lww.com/neurosurgery/fulltext/2024/05000/neurosurgery_and_sport_related_concussion_at_the.2.aspx

 

※ちなみに「のうしんとう」の漢字は、「脳震盪」ではなく、「脳振盪」がよく使用されます。
どちらが間違い!!ということではないようですが…

 

 

 

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スポーツ関連脳振盪(SRC)の現状と課題

スポーツ関連脳振盪(Sport-Related Concussion, SRC)は、競技スポーツや運動中に生じる頭部外傷の一形態として注目を集めています。

 

近年、SRCの長期的影響や適切な診断・治療法の確立が求められる中で、2022年10月に開催された「第6回国際スポーツ脳振盪会議(アムステルダム会議)」が新たなガイドラインを提示しました。

 

本記事では、論文「Neurosurgery and Sport-Related Concussion at the Amsterdam Consensus Meeting」を基に、最新の知見やガイドラインについて詳しく解説します。

 

 

 

1. アムステルダム会議とは?

アムステルダム会議は、2001年に始まったスポーツ脳振盪グループ(CISG)による国際会議の一環で、これまでにウィーン、プラハ、チューリッヒ、ベルリンなどで開催されてきました。

 

今回の会議では、以下の3つのポイントが特に重視されました。

 

  1. SRCの新しい定義の提示
  2. 診断・評価ツールの改訂と新規開発
  3. 小児、パラアスリート、女性などの特殊集団への対応

 

 

2. SRCの最新定義と診断基準

アムステルダム会議では、SRCの定義が従来の神経症状や画像診断に基づくものから、神経生理学的変化や分子レベルのメカニズムを含むものへと改訂されました。

 

新しい定義の要点

  • 原因:頭部、頸部、または体幹への衝撃による力の伝達
  • メカニズム神経伝達物質の異常、代謝障害、軸索損傷などが発生
  • 症状:即時または遅発性の神経学的症状を伴い、通常は数日以内に回復するが、長期化する場合もある
  • 画像所見:標準的なMRIやCTでは異常が見られないことが多いが、研究レベルでは機能的画像や代謝画像で異常を検出できる場合がある

 

この改訂により、従来の臨床的診断に加えて、研究ベースの神経生理学的指標を考慮する必要性が強調されました。

 

 

3. 改訂された診断・評価ツールの概要

アムステルダム会議では、以下のツールが改訂・開発されました。

 

SCAT6(Sport Concussion Assessment Tool 6)
急性期のSRC評価を対象にしたツールで、標準化された質問や認知テストを含みます。
SCOAT6(Sport Concussion Office Assessment Tool 6)
72時間以降の評価に特化した新しいツール。神経心理学的検査や症状追跡を強化しています。
Child SCAT6
5~12歳の子供を対象としたツール。子供特有の症状に対応する質問項目を追加。

これらのツールは、臨床現場での使いやすさを考慮しつつ、研究にも応用できる構造となっています。

ここのところを少し掘り下げていきます!!

 

 

SCAT6

目的と背景

SCAT6は、スポーツ関連脳振盪の急性評価を目的としたツールで、これまでに広く使われてきたSCAT5の改訂版です。

主に競技現場やトレーニング中の緊急時対応で使用されます。

主な改良点
  1. チェックリストの拡充
    • 急性症状のスクリーニング項目が追加され、症状を漏れなく把握できる設計になっています。
  2. 症状の重症度スコアリング
    • 症状の強さを数値化して経時的に追跡可能。
  3. 標準化された神経学的テスト
    • バランス、認知、記憶の評価がより詳細に行えるようになっています。

 

 

使用場面
  • 試合や練習中に脳振盪が疑われる選手への初期対応
  • 簡易的な評価が必要な現場での使用

 

例:評価内容
  • 記憶テスト:「直前の試合スコアは?」「試合相手の名前は?」
  • バランステスト:片足立ちや姿勢安定性の確認
  • 症状チェックリスト:頭痛、吐き気、視覚異常などの確認

 

 

 

SCOAT6

目的と背景

SCOAT6は、脳振盪発症から72時間以降の患者管理をサポートする新しいツールです。

SCAT6が急性期評価を主眼としているのに対し、SCOAT6はサブアキュート期および慢性期の診断と治療計画に特化しています。

 

特徴
  1. 詳細な神経心理学的評価
    • 認知機能や情動状態の詳細なテストを含む。
  2. 症状の経時的追跡
    • 症状の増減を可視化するための記録項目が強化されています。
  3. 個別化された復帰計画
    • 運動復帰や学習復帰の進捗を評価するための指標を提供します。

 

使用場面
  • 外来診療や専門クリニックでの詳細な評価
  • リハビリ計画の策定と経過観察

 

例:評価内容
  • 認知テスト:作業記憶や注意力を測定する課題
  • 感情状態のスクリーニング:不安、うつ症状の有無を確認
  • 運動復帰プロトコルの進捗確認

 

 

 

Child SCAT6

目的と背景

Child SCAT6は、5~12歳の子供に特化した評価ツールです。

小児の脳振盪症状は成人と異なる場合が多く、年齢に応じた対応が求められるため開発されました。

 

特徴
  1. 年齢に適した質問形式
    • 子供が答えやすいよう、簡易な言葉を用いたチェック項目が導入されています。
  2. 保護者や教師向けの情報提供
    • 学校や家庭での症状モニタリングのための具体的な指針が含まれています。
  3. 症状の記録シート
    • 行動や認知機能の変化を詳細に記録するフォーマットが付属。

 

使用場面
  • 学校や地域スポーツ活動での子供の脳震盪評価
  • 小児外来での詳細な評価

 

例:評価内容
  • 記憶テスト:「昨日の朝ごはんは何だった?」
  • 行動評価:集中力や友人との交流の変化を記録
  • 保護者向けガイド:自宅での観察ポイントや注意事項

 

 

 

Child SCOAT6

目的と背景

Child SCOAT6は、子供のサブアキュート期の脳振盪評価に対応したツールです。

これにより、72時間を超える経過観察やリハビリ計画がより適切に行えるようになりました。

 

特徴
  • 子供特有の症状(不機嫌、睡眠障害など)を記録する項目を追加
  • 学校復帰(Return to Learn)の段階的プロトコルを含む
  • 親と教師の連携を支援する情報提供

 

 

CRT6(Concussion Recognition Tool 6)

目的

CRT6は、脳振盪の疑いがある場面で即時対応するための簡易ツールで、特に一般市民やスポーツ関係者が使用することを想定しています。

 

特徴
  • 観察可能な症状(意識喪失、ふらつき、混乱など)のチェックリスト
  • 応急処置として医療機関受診を促すためのガイドライン

 

 

 

 

4. 新しい治療戦略:運動とリハビリテーション

アムステルダム会議で提示された治療戦略では、運動とリハビリテーションがSRC管理の中核的な要素として位置づけられました。

 

従来の「完全休息」から「適度な活動」の推奨へと移行した点が非常に重要です。

この方針転換は、早期介入が神経回復を促進し、症状の持続を防ぐ可能性があるというエビデンスに基づいています。

 

以下に、その具体的な内容を詳しく解説します。

 

 

1. 有酸素運動の導入

背景

脳振盪後、過度な安静は心理的ストレスを増大させ、神経回復を妨げる可能性があります。

有酸素運動は、血流を改善し、脳内の神経伝達物質のバランスを整える効果が期待されています。

 

推奨事項
  • 時期:発症から24~48時間後に、症状が安定した段階で低強度の有酸素運動を開始する。
  • 方法:ウォーキングや静かなサイクリングなどの心拍数を上げすぎない活動を選択する。
  • 進行:症状が悪化しない場合、運動強度を段階的に引き上げる。ただし、激しい運動や接触スポーツは避ける。

 

エビデンス
  • 早期の軽い運動が回復期間を短縮するというデータが複数の研究で報告されています。
  • 心拍数を制御しながらの運動が、頭痛や集中力低下などの症状を軽減する可能性があります。

 

 

2. 多面的リハビリテーションの導入

対象

症状が長引く患者(持続的症状:4週間以上)の回復を促進するために、以下の要素を組み合わせたリハビリが推奨されています。

 

主要なリハビリ要素
  1. 頸部リハビリ
    • 頸部筋肉の緊張や可動域の改善を目指す。
    • 手技療法や姿勢矯正を含む。
  2. 前庭機能リハビリ
    • めまいやバランス感覚の低下に対応。
    • バランスボードや視覚追従トレーニングを活用。
  3. 視覚リハビリ
    • 視覚の歪みや視覚追従能力の低下を改善。
    • 読書やスクリーン作業を段階的に増やすプログラムを実施。
  4. 頭痛管理
    • 慢性頭痛には薬物療法を補完する形で運動療法やストレス管理を行う。
  5. 心理サポート
    • 不安やうつなど心理的影響が強い患者にはカウンセリングを併用する。

 

 

5. 小児や特殊集団への対応

子供やパラアスリートにおけるSRC管理は、一般の成人とは異なる特性を考慮する必要があります。

 

小児への対応

  • 発育段階に応じたリハビリプランが必要
  • 学校復帰プログラム(Return to Learn)の構築が重要

 

パラアスリートへの対応

  • 障害特有の症状や制限を考慮したアプローチが求められる
  • 競技復帰の判断には多職種連携が必要

 

 

6. 長期的影響と倫理的配慮

SRCの長期的影響として、神経変性疾患や認知症リスクの上昇が懸念されています。

 

この分野はまだ研究が進んでおらず、今後の課題として挙げられています。

 

 

長期的影響の調査

  • 神経行動的変化や慢性外傷性脳症(CTE)のリスク評価が必要
  • 選手の早期引退基準の確立が重要

 

倫理的配慮

  • 未成年選手や障害を持つ選手への情報提供と意思決定支援
  • チーム医療の透明性と倫理的判断

 

 

7. 改善すべき課題

アムステルダム会議の成果は重要ですが、以下の点が今後の課題として挙げられます。

 

  1. データの不足:小児、女性、パラアスリートに関する研究データが限定的
  2. 新技術の臨床応用:神経生理学的マーカーや機能的画像技術の普及が課題
  3. ガイドラインの普及:新しい評価ツールを世界中に展開し、多言語対応する必要性

 

 

 

 

おわりに:SRC管理の未来

アムステルダム会議の成果は、SRCの予防・診断・治療における新たな指針を提供し、多くの臨床現場での応用が期待されます。

しかし、まだ未解決の課題が残されており、今後もさらなる研究と改良が求められます。

 

ということで今回のブログは以上となります!

最後までご覧いただき、ありがとうございます!

 

 

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