こんにちは。
トレーナーのこうた(@trainer_blog)です。
先日、カフェインの記事を投稿しましたが、今回もカフェインに着目していきたいと思います。
≫≫カフェインが睡眠に及ぼす影響とは?:科学的データに基づくメタアナリシスとその実生活での応用
スポーツやトレーニングにおけるカフェインの効果は、数十年にわたって研究されてきました。
特にエルゴジェニック(パフォーマンス向上)効果が注目されていますが、これまでの研究結果は一貫していません。
今回、グルジッチ博士らが行った包括的レビューは、これまで発表された21のメタ分析を統合し、カフェインが実際に運動パフォーマンスにどのような影響を与えるのかを検証しています。
「Wake up and smell the coffee: caffeine supplementation and exercise performance-an umbrella review of 21 published meta-analyses」
このブログでは、この研究から得られた知見と、専門家向けの考察をお届けしたいと思います!
カフェインがもたらすエルゴジェニック効果の総括
まずは結論からです。
グルジッチ博士らのレビューによると、カフェイン摂取は有酸素運動、筋力、筋持久力、パワー、ジャンプ力、運動速度など多様な運動パフォーマンスを向上させる効果があるとされています。
特に、有酸素運動におけるエルゴジェニック効果が高く、運動パフォーマンスにおける改善のエビデンスの質は「中程度」から「高い」とされています。
一方で、無酸素運動においては効果が限定的であることが多い点が示され、今後の研究の方向性が議論されています。
レビューの背景と目的
カフェインがパフォーマンスに影響を与えるメカニズムは、神経系の活性化や疲労感の軽減、脂肪酸の分解促進など多岐にわたるとされています。
しかし、これまでの研究は、特定の運動領域(例えば有酸素運動または無酸素運動)のみに焦点を当てており、結果のばらつきが課題となっていました。
今回の包括的レビューは、複数のメタ分析をまとめ、運動種別や参加者の特性に基づいたカフェインの効果を比較・評価することで、科学的な根拠に基づく総合的な見解を提供することを目的としています。
方法と分析の詳細
本レビューは、PubMed、Web of Science、SPORTDiscusを含む12のデータベースから、カフェインと運動パフォーマンスに関するメタ分析を検索し、21のメタ分析を厳選しました。
各メタ分析は、AMSTAR 2チェックリストに基づいて質を評価し、GRADEシステムを使用して証拠の質をさらに分類しました。
その結果、すべてのレビューが「中程度」から「高い」質であり、カフェイン摂取が運動パフォーマンスを向上させる根拠が確認されました。
カフェインの効果を実証する運動パフォーマンスの領域
1. 有酸素運動
カフェインは、有酸素運動の持久力(例えばランニングやサイクリングの持続時間や最大速度)において高いエルゴジェニック効果を示しています。
レビューでは、エフェクトサイズ(効果量)は0.22~0.61の範囲で、一貫して効果が示されていることがわかりました。
特に、時間制限のあるエクササイズよりも距離制限のあるエクササイズで効果が顕著に現れることが確認されています。
2. 筋力と筋持久力
筋力(例:1回の最大挙上重量)や筋持久力(例:疲労するまでの反復回数)にもカフェインの摂取が有効であるとされます。
レビューにおいて、筋力や筋持久力のエフェクトサイズは0.16~0.38とされていますが、95%予測区間を考慮すると、必ずしも一貫した結果が得られているわけではありません。
3. パワーとジャンプパフォーマンス
パワー(例:ウィングテストにおける平均およびピークパワー)やジャンプの高さでもカフェインによる向上が確認されています。
特に、ジャンプテストではエフェクトサイズ0.17とされていますが、無酸素運動領域におけるエビデンスの質が「低い」から「中程度」と評価されています。
証拠の限界と今後の課題
本レビューで取り上げられたメタ分析の大半は若年男性を対象としており、女性や高齢者に関するデータが不足している点が課題として指摘されています。
女性の場合、ホルモンバランスの変化がカフェイン代謝に影響する可能性があるため、男女間でのカフェイン効果の違いを評価する必要があると考えられます。
また、カフェインの長期的な摂取による耐性や、慢性使用がパフォーマンスに与える影響についても今後の検証が求められています。
カフェイン摂取における最適な方法とは?
レビューでは、運動前60分に3〜6 mg/kgのカフェインを摂取することで最適な効果が得られるとされていますが、摂取量の最適値についてはまだ不明です。
特に、異なるカフェイン源(例:カフェイン錠剤、コーヒー、エナジードリンク、カフェインガム)や、カフェインの摂取タイミング(運動の直前や1時間前など)による効果の違いが示唆されており、これらを詳細に検証する必要があります。
コーヒーはカフェインの有効な摂取方法か?
カフェインの摂取には通常、錠剤などの精製されたカフェインが使われますが、コーヒーは世界中で最も一般的なカフェイン源です。
研究によると、5 mg/kg相当のカフェインを含むコーヒーは、錠剤と同様に有酸素運動のパフォーマンスを向上させるとされています。
しかし、コーヒーのカフェイン量は豆の種類や抽出方法により異なるため、精密なカフェイン摂取を行うことが難しい場合もあります。
一般的な目安として、運動1時間前にコーヒー2杯を飲むことで、多くの人にエルゴジェニック効果が期待できます。
今後の研究の方向性
1. カフェインの慢性的な効果
カフェイン摂取が急性の運動パフォーマンスに与える影響は広く研究されていますが、長期的な効果については不明です。
慢性的なカフェイン摂取がパフォーマンスや体力向上にどのように影響するか、特に習慣的なカフェイン使用が長期的なトレーニング効果をどう変えるのかについての研究が期待されます。
2. カフェイン効果の個人差
カフェインの代謝やエルゴジェニック効果には個人差があり、遺伝的要因や普段のカフェイン摂取量が関係する可能性があります。
これにより、カフェイン耐性が高い人や低い人で効果が異なる場合があり、最適な摂取量やタイミングをさらに探る必要があります。
さらに過剰摂取により神経過敏、睡眠障害、消化器系の不調などの症状が引き起こされる可能性もあるため注意が必要です。
3. 性別・年齢別のカフェイン効果
本レビューでは若年男性に基づいたデータが多く、女性や高齢者におけるデータが不足しています。
女性の生理周期や年齢による代謝の違いがカフェインの効果に影響を及ぼす可能性があるため、より多様なサンプルを対象とした研究が求められます。
まとめ
グルジッチ博士らの包括的レビューにより、カフェインが運動パフォーマンスを向上させる効果が再確認されました。
特に有酸素運動や筋持久力、筋力においてはエルゴジェニック効果があり、エビデンスの質も比較的高いことが示されました。
しかし、効果の強度や最適な摂取方法に関するさらなる研究が必要です。
今後は、性別や年齢、個人差を考慮したカフェイン摂取に関する研究が進むことで、より多くの人がカフェインのパフォーマンス向上効果を活用できるようになるかもしれませんね!
ただカフェインには利尿作用があるため、高温環境下での摂取は注意が必要になるかと思います。
いつどんな時でもいい!というわけではなく、個人差や環境、タイミング等を考慮し、摂取する必要があるかと思います。
ということで、今回のブログは以上となります。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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