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健常者におけるクレアチンサプリメントの記憶力向上効果:高齢者への特異的効果と最新メタアナリシスによる知見

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こんにちは。

トレーナーのこうた(@trainer_blog)です。

 

今回は、「Effects of creatine supplementation on memory in healthy individuals: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」

こちらの論文を要約していきます!

 

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始めに

脳は、神経伝達物質の放出やシナプス機能を支えるために大量のエネルギーを消費します。

特に加齢に伴う認知機能の低下に対する関心が高まる中、脳のエネルギー代謝を支援する手段としてクレアチン補給が注目されています。

 

これまで、クレアチンの摂取は主に筋肉のエネルギー供給や運動能力向上を目的として研究されてきましたが、近年ではクレアチンが脳内の生体エネルギー動態にどのように影響し、記憶力に貢献するかが議論の対象となっています。

 

今回のメタアナリシスは、ランダム化比較試験(RCT)を網羅し、クレアチンサプリメントが健常者の記憶力に及ぼす効果を総合的に評価する初の試みとして注目されます。

 

この研究は、特に高齢者に対してクレアチンの摂取が記憶力にどのような改善効果をもたらすかについて貴重な知見を提供しています。

 

 

クレアチンと脳内エネルギー代謝の関連性

クレアチンは、主に赤身肉や魚介類から摂取され、体内で生成もされる有機酸で、エネルギー生産の要として筋肉のみならず脳内でも重要な役割を果たします

 

クレアチンは、ホスホクレアチンと共にアデノシン三リン酸(ATP)を速やかに供給するため、酸化的リン酸化や解糖系よりも迅速なエネルギー供給を可能にします。

したがって、クレアチンが脳内のクレアチン濃度を高め、神経細胞のエネルギー効率を改善し、記憶力や認知機能に寄与する可能性が示唆されています

 

また、クレアチンの抗酸化作用も脳にとって有益とされ、特に加齢に伴い低下する可能性のあるミトコンドリア機能を保護する役割があると考えられています。

これにより、クレアチンが脳内における酸化ストレスを緩和し、記憶や学習機能に重要な海馬を保護する可能性が示唆されています。

 

研究の概要

このメタアナリシスでは、2021年9月までにPubMed、Scopus、Web of Science、およびCochrane Libraryのデータベースを用いて「creatine」「cogn*」「memory」などのキーワードで検索されたRCTが対象となりました。

 

最初に抽出された研究数は9768件で、さらに精査の後、最終的に23件のRCTが選ばれ、そのうち10件が系統的レビューに、8件がメタアナリシスに含まれました。

対象とされた研究はすべて、健常者を対象に、クレアチンサプリメント群とプラセボ群の比較が行われていました。

 

 

主な結果

メタアナリシスの結果、クレアチンの補給はプラセボに比べて全体的な記憶力を有意に向上させることが示されました(標準平均差[SMD]=0.29, 95%信頼区間[CI]=0.04–0.53, p=0.02)。

 

とりわけ注目すべきは、66歳から76歳の高齢者において効果が顕著であり、他の年齢層と比較して大きな効果サイズが認められた点です(SMD=0.88, 95%CI=0.22–1.55, p=0.009)。

 

対照的に、若年層(11歳から31歳)ではクレアチンサプリメントの効果がほとんど見られませんでした(SMD=0.03, 95%CI=−0.14から0.20, p=0.72)。

 

 

クレアチンの用量と効果持続期間の影響

本研究では、クレアチンの用量(1日5g以下または5g以上)や介入期間(2週間未満または2週間以上)が記憶力に与える影響を評価するサブグループ解析も行われました。

 

興味深いことに、クレアチンの用量や介入期間によって、記憶力の向上には有意な差は見られませんでした(低用量群SMD=0.24, p=0.09;高用量群SMD=0.33, p=0.11)。

また、2週間以内の短期間と2週間以上の長期間に分けた解析でも同様に効果の違いは見られず、これまでの研究と同様に、脳内のクレアチン濃度の増加には長期間の介入が必要とされる可能性があります。

 

 

高齢者における記憶力向上効果のメカニズム

本研究が示唆する高齢者におけるクレアチンサプリメントの有効性は、加齢に伴う脳内のクレアチン濃度低下が関与している可能性があります。

 

既存の研究では、加齢とともに脳内のクレアチン輸送が低下することが報告されており、これにより高齢者がクレアチン補給に対して応答性が高くなると推測されます。

また、脳のクレアチン濃度が低い人々ほど、クレアチンの効果が顕著であると考えられます。

 

さらに、クレアチンの補給が神経成長因子やCREB(cAMP反応要素結合タンパク質)の活性化を介してシナプス可塑性を向上させ、学習や記憶に関連する海馬領域における神経活性を促進する可能性も示唆されています。

動物実験においても、クレアチンの補給により海馬ミトコンドリアの活動が増強し、記憶力が向上することが確認されています。

 

 

今後の研究の課題と臨床応用の可能性

本メタアナリシスにはいくつかの限界も存在します。

例えば、記憶力の評価に用いられた方法が多岐にわたるため、データの一貫性に欠ける可能性があります。

 

さらに、対象とされたRCTの多くは、参加者の基準となる脳内や血清中のクレアチン濃度を測定しておらず、応答者と非応答者間の差異を明確にすることが困難でした。

 

また、食事からのクレアチン摂取量についても考慮されていないことが、研究結果の解釈を難しくしています。

 

今後は、クレアチンの脳内輸送メカニズムを解明する研究が必要であり、高齢者や認知症リスクの高い人々における長期的な介入効果を評価するための大規模なRCTが期待されます。

特に、高齢者の記憶力低下予防や認知機能の改善を目的としたクレアチンサプリメントの使用に関するエビデンスが蓄積されることで、栄養学や神経科学の分野での臨床応用の可能性が広がるでしょう。

 

 

結論

本メタアナリシスの結果、クレアチンサプリメントは健常者、特に高齢者の記憶力向上に効果があることが示されました。

今後は、さらに精緻な記憶評価ツールを用いた研究が必要であり、加齢や食事習慣などの要因を考慮する必要があります。

 

ということで、今回のブログは以上となります!

最後までご覧いただき、ありがとうございます!


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