ハードな運動や筋トレを行っている人って強靭な体をしていて免疫力が高そう!
って思いますよね。
全く運動せず、ずっと家に引きこもっている方の免疫力を0とすると、ハードな運動や筋トレをしている方は100くらいあるんじゃないか?
と思いますが、実はそんな単純な話ではありません。
実は運動強度/量が高すぎるとかえって免疫力が落ちやすいと言われています。
なぜそのようなことになってしまうのか?
具体的に解説していきますね!!
・運動に関わるトレーナーや指導者さん
・免疫力を高めたい方
免疫力と運動の関係性
運動量/強度が高すぎるとなぜ免疫力が低下するのか?
体の中ではどのようなことが起こっているのか?
については後ほど詳しく説明しますが、まずは分かりやすく
の関係性の図を現したJカーブというものをご紹介します。
まずは下の図をご覧ください。
https://sports119.jp/sports-kaze より引用
一番左の運動をあまりしない人が平均だとすると、適度に運動をする人は風邪のリスクが減ります。
これは運動を全くしない人に比べて、
と言われています。
しかし逆にある一定の運動強度からは、運動強度が高い人・運動量が多い人の方がどんどん風邪のリスクが高くなっているのが分かります。
こちらは運動を全くしない人に比べて
とも言われています。
長距離走は要注意
特に長距離ランナーのような、酸素をより必要とする運動の方が免疫力が低下しやすいとも言われており、
競技終了後2週間に50~70%の選手がかぜ症状を呈し、そのリスクは
とも言われています。
長距離ランナーに多い理由として
- 活性酸素の発生量が増える
- 気道粘膜が乾燥・冷却され、病原体を排除しにくくなる
ことが理由として考えられています。
吸った酸素の数%は毒性の活性酸素となり、酸化を起こします。過度な酸化ストレスは免疫細胞のDNAを傷つけ、免疫力を低下させます。
なぜ運動で免疫力が低下するのか?
ではなぜ運動強度が高すぎると免疫力が逆に低下してしまうのでしょうか?
その理由を1つずつ説明していきます!
免疫力が低下する理由
- 好中球や単球の量が増加し、活性酸素産生能も亢進する
- NK細胞が劇的に低下する
- 分泌型IgA値が低下する
- ホルモンバランスの乱れ
これらのことが高強度の運動で起こると考えられています。
他にもサイトカインの関与なども考えられますが、説明が難しいのでここでは省きます。
別にそんな詳しく知りたくないよ!という方はとばしてください!笑
好中球や単球の増加
生体防御機能として大事になるのが、
好中球、単球、マクロファージ
などの食細胞と呼ばれる白血球です。
この白血球は、いわゆる炎症と呼ばれる反応を起こし、感染組織や損傷組織の修復過程に寄与します。
逆に過剰な炎症(過剰な白血球)は治癒の遅延や種々の機能障害を引き起こします。
そしてこの好中球や単球は運動によって血中細胞数が増加します。
しかし運動の強度が高すぎたり、持続時間が長すぎると過剰に増加し、種々の物質の影響により活性化されます。
この白血球には活性酸素産生能があるため、その機能も亢進され、体が酸化ストレスにされされます。
このように適度な白血球は体を守る上でとても重要ですが、過度に増えすぎてしまうとかえって体に害をもたらす可能性があるということです。
NK細胞が劇的に低下する
白血球の1つであるNK(ナチュラルキラー)細胞は、その名の通りがん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第攻撃する細胞です。
血中NK細胞数は最大運動の直後に約5倍程度も上昇すると言われていますが、運動終了後には運動前の半数まで減少すると言われています。
しかし、適度な運動後はこの現象が起きず、激しい運動後にのみ起こるとされています。
これをオープンウィンドウ説といいます。
https://tarzanweb.jp/post-214634 より引用
その名の通り、窓を開けっ放しにしているように病原体に対して無防備な状態のことを指します。
なぜこのオープンウィンドウが起こるのかについて詳しく説明すると小難しい話になってしまうのでここでは省きます。
要は激しい運動直後は感染症に弱い状態になっているということです!
分泌型IgA値が低下する
私たちの粘液中には分泌型IgA(免疫グロブリンの一種で粘膜免疫の主体)が含まれており、病原体の侵入を防いだり、食細胞による排除を促進したりします。
私達の免疫機能を測る指標の1つに唾液中の分泌型IgA値を用いることが多く、高強度で長時間の運動でこの値が低下することが分かっています。
この結果も先ほどのオープンウィンドウ説を支持する形になっています。
私たちの目、鼻、口の粘膜が弱まり、感染しやすい状態になるということですね。
先ほども言いましたが、これに相まって長距離ランナーは口腔~気道が乾燥し病原体を排除しにくくなるため、よりリスクが高まります。
ホルモンバランスの乱れ
運動をすることというのは体にとってはストレスであり、そのストレスに対抗するためにコルチゾールやカテコールアミンと呼ばれるストレスホルモンが分泌されます。
高強度の運動ではこのホルモンが過剰に分泌されます。
そしてこのコルチゾールやカテコールアミンには免疫細胞の働きを抑制する作用があり、運動直後の一時的な免疫力低下を招きます。
ちなみにダイエットにランニングが向かない理由の1つにこのコルチゾールが関与します。
過去にその理由についてまとめているので気になる方はぜひそちらをご覧ください!
≫≫有酸素運動をすると太る?ダイエットに有酸素運動が不向きな理由を徹底解説!
適度な運動ってどのくらい?
一番最初にお見せしたJカーブやオープンウィンドウ説からすると、やはり「適度な運動」が免疫学的視点からは大事になります。
では一体適度な運動とはどの程度の運動なのでしょうか?
これまでの研究で分かっていることは、
- 最大心拍数/最大酸素摂取量の50~60%
- 人と会話しながら行える程度
- 「ややきつい」と感じる程度
- 上記の強度を1日20~60分程度
- 週3回またはそれ以上
ということ。
高強度な運動している人は免疫力が低いまま?
ここまでの話を聞くと、じゃあ高強度で長時間の運動をしている人はもう免疫力が壊滅的なのか。と思うかもしれません。
ただ一概にそうとは言えなくて、運動によって得られる
- 程度な体脂肪
- 深部体温のセットポイント上昇
- 筋量の増加
- 血流促進
は免疫にとってはプラスに働きます。
もちろん、高強度な運動の直後は免疫力が著しく低下しますが、安静時においては他の方々よりも免疫力が高い状態にあるかも?しれません。
ただ過労によっても免疫力は低下するので、やはり過度な運動・スポーツを行っている方はそうでない方々よりもより注意が必要なことに変わりはないかもしれませんね。。
強度の高い運動をする時は?
アスリートや長距離ランナーにとっては高強度の運動は避けては通れない道。
そんな方は運動後のリカバリーがとても重要になります。
そこで大事になるのが、
- 栄養
- 休養(睡眠)
です!
栄養で免疫力向上
当たり前ですが、大堰堤で「バランスの取れた食事」が超重要になります。
その上で、大事になってくるのが腸内環境を整えることです
私たちにある
と言われています。
そして腸内環境を整えるために大事になってくるのが
- グルタミン
- プレバイオティクス食品
- プロバイオティクス食品
です。
もちろん免疫力を向上させる栄養素という大きい括りでいくともっと他にもありますが、腸内環境を整えるという括りで言えば上記の3つになるかなと。
≫≫免疫力を向上させる栄養素5選!新型コロナ予防としても有効?偏った食事はリスクを高める
そしてこれら3つは過去の記事でガッツリと解説していますので、ぜひそちらをご覧ください!!
【グルタミン】グルタミン摂取で風邪知らず?免疫力向上でコロナ対策としても注目
【腸内環境①】腸内環境を整える方法とは?腸活で病気になりにくい体を手に入れよう
【腸内環境②】腸内環境を整えるメリット5選!腸には免疫やダイエットと深い関係があった
睡眠で免疫力向上
そしてもう1つ大事になるのが休養。とくに睡眠になります。
睡眠時間が短い人は病気にかかりやすかったり、怪我をしやすかったりするということが研究で分かっています。
実は私のブログで最も多く取り上げているトピックが睡眠についてなのです。笑
それくらい私のブログでも日々睡眠の重要性を訴えてきました。。
こちらも過去の記事を読んでいただいた方が早いので、ぜひそちらをご覧ください!
・睡眠に深く関わるメラトニンの作用とは?認知症や骨粗鬆症とも関係があった?
・睡眠障害のリスク要因5選!睡眠不足は肥満率も死亡率も高いから要注意!
・睡眠の質を上げるポイント及び栄養素を徹底解説!簡単な方法から応用編まで詳しく説明します
・睡眠不足で死亡率が上昇する?意外と知らない睡眠不足が招くリスクとは?
筋トレは免疫力低下する?
ここまで「高強度の運動」と説明してきましたが、筋トレは同様に免疫力が低下するのでしょうか?
結論、
ということです。
もちろん、筋トレをすることで筋量が増え、深部体温が上がり、血流が良くなり免疫力は向上していくと考えられます。
しかしやはり、筋トレ直後においては免疫力が低下するという事実に変わりはなさそうです。
結論:高強度の運動後はリカバリーを意識しましょう!
健康目的で運動をされている方は「適度な運動」を心がけましょう。
そしてどうしても高強度の運動をする方は、その後のリカバリー。特に栄養と睡眠の2つを強く意識しましょう!
高強度の運動をするな!ということではなく、運動って一概に免疫力を向上させてくれるわけではないよ。ということをお伝えしたかったです。
強度や量によっては逆に免疫力が低下してしまうので、その後のリカバリーでプラマイゼロを目指しましょう!笑
免疫力について軽く勉強したいなら下記の本がおススメです!
図や絵が多いので分かりやすいです。