皆さん毎年何人の方が熱中症で亡くなられているか知っていますか?
昔よりも熱中症で亡くなられる方が増え、平成29年では約600名だったのに対し、平成30年は約1600名と爆発的に増えています。
そしてその8割近くが65歳以上の高齢者なのです。
またスポーツ中にも熱中症にかかる方が多いので、正しい知識を身に付け、正しい処置をする必要があります。
この記事では、熱中症について徹底解説していきます。
・スポーツに携わるトレーナー・コーチ陣
・両親が高齢な方
熱中症とは?
熱中症とは、
のことを言います。
もっと詳しく説明すると、体温が上昇し、体内の水分や塩分バランスが乱れたり、体温調節機能が破綻したりすることで頭痛・めまい・失神・吐き気等の様々な症状が起こる疾患です。
熱中症は決して軽いものではなく、死に至る危ない病気なので、近くにいる人の的確な判断が求められます。
スポーツに携わる方は必ず知っておきましょう。
熱中症の話をする前に、人間の体温調節について少し説明させてください。
体温調節機能について
人間の深部体温は環境温度が変化しても常に一定に保たれるようにできています。
これは血圧や血糖値も同じで、常に一定に保たれています。
このことを
といいます。
人間は体温が上がった時に熱放散をして体温を下げますが、この熱放散の方法は4つあります。
2.伝導→物を伝って熱を放出
3.対流→空気などの流体によって熱を放出
4.蒸発→汗によって熱を放出
この輻射・伝導・対流は皮膚温と環境温の差が関係します。
熱は高いところから低いところに移動し、皮膚温の方が高ければ外に放熱するし、皮膚温の方が低ければ、体内へ熱が移動するので体温が上がることになります。
蒸発は湿度と関係し、湿度が高いと放熱がうまく出来なくなります。
洗濯と同じで、同じ気温だったとしても湿度が高いと乾きにくいですよね?
それと同じイメージです。
熱中症で特に大事になってくるのが蒸発です。
湿度が高いということがかなり熱中症のリスクを高めます。
これについては後ほど説明しますね。
非労作性熱中症と労作性熱中症
熱中症の分類は後ほど紹介しますが、熱中症には非労作性と労作性の熱中症があります。
非労作性とは、いわゆる運動していない時になる熱中症で、高齢者が自宅で熱中症になってしまうのがこれです。
労作性とは、いわゆる運動をしている時になる熱中症で、若者に多いのが特徴的となっています。
特に高齢者の中でも、
・糖尿病
・精神疾患
・認知症
などがある場合はよりリスクが高くなります。
熱中症のレベル(重症度分類)
熱中症はその重症度や症状によって4つに分けることができます。
2.熱失神
3.熱疲労
4.熱射病
数字が大きくなるにつれて重症度も高くなります。
その為、熱けいれんが軽症で熱射病が一番重症ということになります。
熱けいれんとは?
熱けいれんは、大量の発汗があって水のみ補給した場合に起こるもので、その主たる病態はNa欠乏性脱水とされています。
皆さん一度は経験したことがあるかもしれませんが、運動中に足が攣ったりしませんか?それが熱けいれんと言われるものです。
なぜこのようなことが起こるかと言うと、下の図を見てください。
この水とNa(ナトリウム)の割合は適当ですが、運動前は同じ比率だった場合、運動するこで汗をかき、水もNaも減りますよね?
そこに水のみを補給してしまうと、Naの割合が低くなってしまい、Na欠乏性脱水になってしまうということです。
熱けいれんの処置
熱けいれんの処置は主に2つ。
2.生理食塩水(0.9%)を飲ませる
勿論、氷などがあれば冷やしてあげるのもいいでしょう。
また、生理食塩水がなければOS-1のような経口補水液でも全然OKです。
その場の処置としてはストレッチも有効ですが、高齢者等の場合は無理にストレッチをすると筋を痛める可能性があるので気を付けましょう。
熱失神とは
次に熱失神についてです。
熱失神とは、体温の上昇に対する体温調節機構としての血管拡張と発汗による脱水が相まって、血圧低下から失神に至る状態のことをいいます。
その名の通り失神します。
これはホースをイメージしてもらうと分かりやすいのですが、ホースの水が血流だと思ってください。
この水の勢いを強める為には皆さんどうしますか?
2.ホースの口をつまみ、水の勢いをだす
のどちらか、または両方だと思います。
熱失神ではその真逆の事が起きます。
脱水で水の量がそもそも少なく、さらに体温上昇し血管拡張することで、ホースの口をつまんでいない状態になっています。
脳へ血流を送るには重力に逆らわなくてはいけないので、それなりの勢いが必要ですが、上記の状態になり、脳に血液が行き渡らなくなって失神します。
熱失神の処置
熱失神の処置としては、
2.0.1-0.2%の食塩水補給
3.下肢を挙上する
があります。
体を冷やすことはもちろんですが、熱けいれんの時と違い熱失神では、0.1-0.2%の食塩水を補給します。
熱けいれんの時はNa欠乏性脱水が起きていたので0.9%でしたが、今回は水もNaも足りていないので、0.1-0.2%で十分です。
市販のスポーツドリンクだとVAAMやアミノバイタルがこれにあたります。
また、脳に血流が足りていないので、下肢を挙上することで、脳に血流が行きやすいようにしてあげます。
熱疲労とは
次に熱疲労についてです。
熱疲労とは、脱水によって、全身倦怠感・脱力感・めまい・吐き気・頭痛などの症状が起こる疾患のことをいいます。
体温上昇が顕著ではない場合も多く、脱水による症状が主になっています。
発汗が多く、血圧低下・頻脈・皮膚蒼白などが見られるのが特徴です。
熱疲労の処置
基本的に熱失神の時と処置は同じで、とりあえず体温を下げることと、食塩水を補給することが大切になってきます。
吐き気等で口から食塩水を補給できない場合は、点滴が必要になってきます。
熱射病とは
最後に一番重症度の高い熱射病についてです。
熱射病とは体温調節が破綻して起こり、高体温と種々の程度の意識障害が特徴の疾患になります。
また、脳・肝・腎・心・肺などの全身の多臓器障害や播種性血管内凝固症候群(DIC)による出血を合併し、死亡率も高いものとなっています。
要するに…
と言えます。
擦り傷で出血した際に、放置しておくと血が固まりますよね?それが血管内の様々な場所で起こってしまう病気です。
すると血を固める作用のある血小板がたくさん消耗され、逆に出血が起き、死に至ります。
熱射病の処置
熱射病の処置として一番大事なのが、
ことです。
体温を下げる方法は、
2.頚、腋下、鼠径部の太い血管を冷やす
3.氷水に浸かる
がありますが、一番効率良く体温を下げられるのは、「氷水に浸かる」です。
2°の氷水に浸かった場合、1分で0.35°体温が下がると言われており、これが現段階ではもっとも効率よく体温を下げる方法だと思われます。
勿論、氷水に浸かりながら、扇風機で扇いだり、太い血管を冷やしたりすることも効果的です。
結論:食塩水と体温をいち早く下げることが求められる
熱中症のどの重症度だったとしても、体温をいち早く下げることと、食塩水を補給することは絶対に必要です。
最初にも言いましたが、熱中症は決して軽いものではなく、死に至る危ない病気なので、近くにいる人の的確な判断と対応が求められます。
もし、周りに熱中症の方がいたら、
2.食塩水を補給する
この2点を頭に入れ、対応してみてください。
熱中症の予防に関しては、ぜひこちらの記事をご覧ください。