皆さん“ドローイン”って知っていますか?
またはやったことありますか?
腰痛が治る!痩せる!パフォーマンスが上がる!
などと言われ、一時ドローインブームのような時期がありました。
今でも痩せるために、腰痛を治すために、またはパフォーマンスを上げるためにドローインを行っている方は多いのではないでしょうか。
しかし、一方で”ドローインはやめた方が良い。体に悪い”と言っている方もいます。
私はドローインを完全否定はしませんが、ドローインの目的を誤解している方が多いように感じます。
何のためにドローインを行うのか。ここをハッキリとさせましょう!
今回はそんなドローインの謎を紐解いていきます。
・パフォーマンスを上げるためにドローインをしている
・よく分からないけど取り入れている
ドローインは意味ないのか?
まずは結論から…
です。
さらにいうと、ダイエット効果はありません。
腹部が引きしまる可能性はあったとしても、ドローインで痩せるとは考えにくいです。
そもそもドローインをよく知らない方もいると思いますので、順を追って説明していきます。
ドローインとは?
まず”ドローイン”とはなんぞや?という話ですよね。
ドローインとは簡単に言うと、
トレーニングになります。
何も知らない人が聞くと、「え?お腹引っ込めるだけ?」と少し驚きですよね。
詳しいやり方は
2.手はおへその下
3.息を吸い、お腹を膨らませる
4.息をゆっくりと吐ききる!お腹が凹み、手が沈み込んでいく感覚を得る
5.吐ききった時に、お腹が手を押し返してくる感覚を得る
6.お腹を凹ませたまま、胸で小さく呼吸を繰り返す(20.30秒程度)
7.ゆっくりと息を吸う
この繰り返しになります。
意外にドローインを調べると5のところの記載がないのに驚きなのですが、ドローインは腹横筋を鍛えるトレーニングなので腹横筋の収縮を感じなくてはドローインが出来ているとは限りません。
また応用として立ってドローインしたり、四つん這いでやったりもしますが、まずは仰向けでやるやり方が基本になります。
体幹とは?
腹部周りだけを体幹という場合もありますが、それは狭義の意味での体幹です。
骨盤には骨盤底筋群、胸郭には横隔膜、お腹の側面&前面には腹横筋、背面には多裂筋があります。
ここに囲まれたところを体幹は狭義の体幹といいます。
広義の体幹は、
のことをいいます。
腹横筋とは?
ドローインはそもそも腹横筋をターゲットにしたエクササイズです。
腹横筋は腹筋の1つで、よく腹筋が割れて目に見えている筋肉は腹直筋といい、腹横筋とは別の筋肉になります。
腹直筋は縦に走行していますが、腹横筋は横に走行しています。
いわゆるコルセットのようにお腹を横方向に覆っているので、鍛えることで体幹が安定する!と言われているのです。
腹筋群には他にも内腹斜筋、外腹斜筋と呼ばれる筋肉もありますが、腹横筋が1番深層にあります。
そして、体の動きを生み出すというよりは、腹圧を高める、腰椎を安定させる、内臓のポジションを安定させるなどの役割が主になります。
ドローインは体に良いのか?
ドローインで腹横筋を鍛えることで”ポッコリお腹を解消できる”と言われています。
そのため、ダイエットに良い!と言われているのです。
また、コルセットの役割になるので、”腰痛にいい”とも言われています。
実際に腰痛患者にドローインを行ってもらった結果、腰の違和感が減ったり、意識せずに姿勢が良くなったと感じる人がほとんどだったという研究もありました。
なので絶対ではありませんが、少なからず腰痛持ちの方には一定の効果がありそうです。
また、ドローインで腹横筋が収縮し、筋厚が太くなったとする報告もあります。
要は「腹横筋を単独鍛える」のであれば、適したエクササイズだと言えます。
ドローインは意味ないのか?
先ほど言ったように、「腹横筋を単独で鍛える」ことが目的なのであればドローインは意味のあるエクササイズとなります。
逆に腹横筋を単独で鍛える理由がないのであれば、あまりオススメはしません。
その理由としては主に2つあり、
2.パフォーマンス低下を招きかねない
からです。
体幹の安定にはIAPが重要
「腹腔内圧(IAP)は脊柱の主要なスタビライザーである。」 (Pavel Ko;ar)
腹腔内圧のことをInternal Abdominal Pressure(IAP)といいます。
そしてこのIAPが脊柱の安定化にはとても重要で、IAPが高い状態は、体幹がより安定しやすい状態だといえます。
ではこのIAPを高めるためにはやはりドローインが重要なのでは!?
と思うかもしれませんが残念ながら、真逆の反応がドローインでは起きてしまうのです。
ドローインではIAPが高まりにくい
IAPを高めるために一番重要なのは、横隔膜の適切な収縮(下降)です。
横隔膜は息を吸ったときに収縮し、下降してきます。
すると腹部が上から押しつぶされるような形になるため、IAPが高まります。
逆にドローインで腹横筋の単独収縮を行うと、腹部周囲を固めた状態になるため、腹横筋が下降しにくくなってしまいます。
要はIAPが高まりにくい状態になってしまうということです。
ドローインはパフォーマンス低下を招きかねない?
ドローインは”パフォーマンスを落とす可能性がある”と言われています。
また、腹横筋の単独収縮が起こるシーンがありますでしょうか?
どちらも答えはノーなはずです。
実際に、ドローインを行った時の回旋動作はIAPを高めた状態よりも安定性が低下することが分かっています。
パフォーマンスの観点からもドローインで腹横筋の単独収縮を狙うよりも、IAPを高めた方がメリットが大きいのです。
勿論、IAPを高める上で腹横筋はとても重要になります。
しかし、
2.他の腹筋群や骨盤底筋群などとの共同収縮
が大事になります。
ドローインはどう取り入れるべき?
ではドローインはどのように取り入れるべきなのでしょうか?
それはズバリ、
と私は考えます。
ドローインの本来の目的
元々ドローインは、腰痛の方に対して用いられており、腹横筋のフィードフォワード機能の低下を基に考えられています。
あらかじめ目的とする運動に必要な運動指令を脳内で計算しておき、フィードバック情報に頼ることなく運動を遂行する制御
腹横筋を意識するためならあり
先ほどもいいましたが、
・ダイエット効果もない。
・IAPを高めた方が体幹は安定する。
と考えられます。
しかし、やはり腹横筋を単独で狙えるエクササイズとしては優秀だと思います。
なので、「腹横筋を意識する」ことを目的とするのであれば、全然ありです。
体幹の深部にあり、機能面で重要な筋肉であることは間違いないので、その腹横筋の収縮感を得られることは結構大事だと思います。
ドローインの変わりにやるなら?
私がオススメするのは
です。
呼吸がなぜ大切?
呼吸の大切さについてはこちらの記事でも取り上げていますので、よければ合わせて読んでみてください。
≫≫間違った深呼吸は逆効果?体の中に酸素を行き渡らせる正しい深呼吸とは
呼吸では横隔膜がとても大事になってきます。
横隔膜は呼吸筋としても機能しますし、姿勢維持筋としても機能します。
乱れた呼吸を整え、横隔膜をしっかりと機能させることで、IAPが高まり体幹が安定します。
まずは横隔膜をしっかりと機能させるために、呼吸のエクササイズはオススメです。
横隔膜の機能についてこちらの記事でまとめています。
≫≫横隔膜の機能を徹底解説!横隔膜は呼吸だけじゃなく姿勢とも深い関わりがあった?
呼吸のエクササイズ?なにそれ?
という方はぜひこちらの本を読んでみてください。
ブレーシングとは?
ドローインは主に腹横筋を収縮させるトレーニングでしたが、ブレーシングは腹壁前面や後面の筋群を同時に収縮させる方法です。
お腹全体を硬くすることで、体幹の安定性を高める方法です。
現にドローインよりも体幹部の安定性は高いと報告されています。
こちらの方がより競技では使える場面が多いので、ブレーシングを取り入れたトレーニングはオススメです。
もちろん、ずっと腹部全体を固めるのではなく、「瞬時にブレーシングの状態を作れる」ことが重要です。
なので、ブレーシングが正義!と言いたいわけでもないので悪しからず。
結論:ドローインは意味ないわけではない!
ドローインは腹横筋を単独で鍛えるトレーニングとしては、実際に研究結果でも効果があると分かっているので、いいトレーニングと言えると思います。
しかし、パフォーマンスを低下させる可能性もあるため、腹横筋を鍛えるトレーニングではなく、腹横筋を感じるトレーニングとしてドローインを採用するのがいいのではないかと思います。
また、代わりに呼吸のトレーニングし、IAPを高めることが重要だと感じます。
呼吸は健康とパフォーマンスの観点で最近とても注目されているため、呼吸は今後さらに注目されていくと思います。
ドローインで腰痛が治った!
という人が一定数いるのも事実なので、結局のところ自分に合ったものを自分で選択するのがいいと思います。
繰り返しになりますが、ドローインで腹部が引き締まることはあっても、痩せるということはほぼありません。
呼吸に関しては本当に多くの書籍が販売されているので、ぜひ1冊は読んでみてください!
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