2020/8/4、大阪府庁で吉村大阪府知事による定例記者会見が行われました。
その中で、ポビドンヨードうがい薬が新型コロナウイルスに対する効果が確認されたというのです。
その会見の様子は昼頃のニュース番組で取り上げられ、その後瞬く間に薬局からポビドンヨードうがい薬が姿を消しました。
会見で吉村さんがいいと言っていたから。という理由で買っている方がほとんどだとは思いますが、本当にそのような研究結果がでているのでしょうか?
会見で用いられた研究を読んだところ、多くの方が誤解している内容があることに気づきました。
今一度今回の研究結果を精査し、本当にポビドンヨードうがい薬が必要なのか解説していきたいと思います!
・ポビドンヨードうがい薬が救世主だと思っている
・正しい情報を知りたい
ポビドンヨードは新型コロナウイルスに効果的なのか?
この”効果的”という言葉をどのように解釈するかで回答は変わってきますが、予防効果があるかないかでいったら、
です。
では、一体ポビドンヨードうがい薬は新型コロナウイルスとどのような関係があったと記者会見で発表されたのでしょうか。
ポビドンヨードは新型コロナウイルスを減らす?
今回記者会見で発表した研究とは関係ないのですが、シンガポールの国立大学が発表したある研究があります。
その研究によると、
ポビドンヨードうがい薬でのうがいは新型コロナウイルスを不活性化させる
とのこと。
では、次に吉村さんが記者会見で発表していた研究について見ていきましょう。
簡単にまとめると、
ということです。
上記のことからポビドンヨードうがい薬でうがいをすると確かに新型コロナウイルスを撃退することができそうだ。
という結論になりますね。
ただし、”口腔内”に限ってはですが。
ポビドンヨードうがい薬で有名なイソジンにも、ウイルスや細菌・真菌に対して殺ウイルス・殺菌効果があると記載されているので、まあそれは撃退してくれないと困りますよね。笑
ポビドンヨードうがい薬が与えた誤解
ここまで見ていただいた方は、
「やっぱりポビドンヨードうがい薬はコロナに効くじゃん!」
と思うことでしょう。
しかし、まだそのように決めつけるのは早いです!
今回の発表された論文やポビドンヨードうがい薬が皆さんに与えた誤解を解いていきましょう。
2.効果は口腔内や喉の限局している
3.PCR陽性=コロナ感染者ではない
4.ポビドンヨードうがい薬では風邪は予防できない
1つ1つ解説していきます。
コロナ患者がポビドンヨードうがい薬を使用した研究である
まず誤解の1つ目です。
今回発表された研究対象者は”コロナ患者”であり、
ということです。
要は、感染していない人達が予防でどうこうしようという話ではありません。
コロナ患者の方で水うがいをした群と、ポビドンヨードうがい薬でうがいした群では、ポピドンヨードうがい薬の方が口腔内のコロナウイルスが減ったということです。
ここで注意点が1つ。
ということです。
なぜなら本当はウイルスが体内にいるかもしれないのに、陰性になりやすいからです。
効果は口腔内や喉に限局している
次に誤解の2つ目です。
確かにポビドンヨードうがい薬で新型コロナウイルスは減りましたが、それは体内から消え去ったわけではありません。
あくまでも
という話です。
なので陽性が陰性になったのではなく”偽陰性”になったということです。
※偽陰性:本当は陽性なのに陰性という結果がでてしまうこと
確かに一時的に口腔内や喉のウイルスが減る為、飛沫感染の予防には効果的かもしれません。
しかし、今回の研究ではどの程度の時間、ウイルスが減るのかが分かりません。
もしかしたら数分後にはウイルスの数が元通りになっているなんてことも考えられます。
PCR検査陽性=コロナ感染者ではない
次に誤解の3つ目です。
これはポビドンヨードうがい薬は関係ありませんが、多くの方が誤解している事実です。
PCR検査で陽性となった人は、全員コロナ感染者かというとそうではありません。
逆に陰性だったから、コロナには感染していないとも言えないのです。
PCR検査は、
特異度=99%
と言われています。
感度とは、病気の人を正しく病気であると診断できる確率
特異度とは、病気でない人を正しく病気でないと診断できる確率
のことです。
感度が70%だった時、100人の感染者にCPR検査をすると、70人は陽性、残りの30人は陰性となるのです。
30%も感染者を見逃してしまうのです。
次に特異度が99%の時、100人の健常者にPCR検査をすると、99人は陰性、1人は陽性と診断されてしまいます。
1人くらい。と思うかもしれませんが、検査数が多くなればなるほど、この人数も馬鹿になりません。
ポビドンヨードうがい薬では風邪は予防できない
最後に誤解の4つ目。
これは有名な話で、うがい薬では風邪の予防はできないのです。
風邪に限って言えば、予防効果があるのは”水うがい”です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
皆さん風邪の予防で何か対策は行っていますでしょうか? よく聞くのは、うがい・手洗い・マスク・ビタミンCを摂るなどでしょう…
確かに今回はコロナの話なんだから風邪の話を持ち出すのは。と思う方もいるかもしれません。
でも2点だけ言わせてください。
2.口腔内のウイルスが減ることと、感染を防げるということは別物
ということです。
うがい薬によるうがいで口腔内の常在菌が死滅する
普段私達の口腔内には、常在菌が多く存在します。
常在菌には悪いものもあれば、ウイルスや菌の侵入を防ぐ善玉菌も存在します。
この常在菌のおかげで私達はウイルスや菌が体内に侵入せず、健康でいられるといっても過言ではありません。
しかし、ポビドンヨードうがい薬でうがいをするとこの常在菌が死滅すると言われているのです。
確かにコロナウイルスのような悪者を退治してくれますが、善玉菌まで死滅させてしまうのです。
ここからはあくまで可能性の話ですが、日常的にポビドンヨードうがい薬でうがいをすると常在菌が死滅し、
かもしれません。
まあただの憶測です。
口腔内のウイルスが減ることと、感染が防げるということは別物
ポビドンヨードうがい薬でのうがいは、新型コロナウイルスを減らす
ということと、
ポビドンヨードうがい薬でのうがいは、感染する確率を減らす
ということは別物です。
普通であれば、
2.ウイルスへの暴露が減ると感染リスクも減る
3.だからポビドンヨードで感染リスクが減る
と考えがちですが、大抵の場合こんな単純な話ではありません。
ウイルスは鼻からも目からも侵入してきますからね。
卵を摂取すると悪玉コレステロールが上昇する。コレステロールが上昇すると心筋梗塞のリスクが上昇する。じゃあ卵を摂取すると心筋梗塞のリスクが上がる。かと思いきや相関は見られなかった。
皆さんは一日に何個卵を食べていますか? 卵は「完全栄養食品」と呼ばれており、一見健康の為にはたくさん食べたほうが良さそう…
ポビドンヨードうがい薬の注意点
これらのことを全て理解した上で、使用および購入される方にいくつか注意点があります。
2.妊婦の方は要注意
3.転売は法律違反
詳しい説明は省きますが、甲状腺機能に異常がある方と妊婦さんは使用には注意が必要です。
また、ポビドンヨードは医薬品であるため、転売が法律で禁止されています。
これは販売者だけでなく、購入者側も肝に銘じておかなくてはいけません。
結論:ポビドンヨードうがい薬に新型コロナウイルス感染症の予防効果は認められていない
ここまでお付き合い頂いた皆様。
まだポビドンヨードうがい薬がほしいですか?
また今後研究が進み、ポビドンヨードうがい薬が予防に効果的だ!となる日もあるかもしれません。
しかし、現段階では予防効果は認められていません。
あくまでも感染者の口腔内に存在するウイルスを一時的に減少させるという効果にとどまります。
私もしかしたら新型コロナウイルスに感染してるかも。という方はポビドンヨードうがい薬でうがいをすることで、周りに拡散するリスクを減らせるかもしれませんね!